政府による新型コロナ対策の賛否は「支持政党」によって左右されるとの研究結果
世界各国の政府は新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに対応するため、都市封鎖などの感染抑制対策にワクチン接種、ダメージを受けた産業への補償などさまざまな政策を打ち出しています。そんなCOVID-19対策の賛否は、その人の「支持政党」によって左右されるとの研究結果が米国科学アカデミー紀要に発表されました。
Politicians polarize and experts depolarize public support for COVID-19 management policies across countries | PNAS
https://www.pnas.org/content/119/3/e2117543119
When assessing COVID plans, people place party over policy
https://phys.org/news/2022-01-covid-people-party-policy.html
アメリカのコロラド大学ボルダー校が主導する研究チームは2020年8月から11月にかけて、ブラジル・イスラエル・イタリア・スウェーデン・韓国・イギリス・アメリカの7カ国に住む1万3000人を対象に、政府のCOVID-19対策についての評価を尋ねる調査を行いました。
この調査では、ソーシャルディスタンスや職場における規制、人々の接触追跡、移動制限といった現実に行われた措置を含む政策について尋ねました。さらに、アメリカ在住の参加者のみでフォローアップ調査を行い、国際的なワクチン配布計画に関しても評価してもらったとのこと。
研究チームは回答者に対し、それぞれの政策について「リベラルなエリートに支持されている」「保守的なエリートに支持されている」「超党派連合に支持されている」「無党派の科学専門家に支持されている」といった補足を入れました。
リベラルまたは保守のエリートには実際の政治家の名前が使用され、アメリカではリベラルなエリートに現アメリカ大統領(調査時点では大統領候補者)のジョー・バイデン氏、保守派のエリートに前アメリカ大統領(調査時点では現職大統領)のドナルド・トランプ氏が割り当てられ、ブラジルではリベラルなエリートにフェルナンド・ハダド氏、保守派のエリートに大統領のジャイール・ボルソナーロ氏が割り当てられました。
回答結果を分析したところ、回答者は自らが支持する政党のエリートが政策を支持する場合、自分も同じように政策を支持する可能性が著しく高いことが判明。しかし、超党派の連合や中立的な科学専門家が支持した政策があった場合、その政策が最も高い支持を獲得することもわかりました。
コロラド大学ボルダー校のLeaf Van Boven教授は、かつて気候変動対策について同様の調査を行った際にも、支持政党によって支持する政策が変わることが確認できたと指摘。しかし、緊急の協調的行動が必要なパンデミックにおいても同様の結果が見られたことは驚きだったそうで、「COVID-19に関しても他の問題と同様に、人々は政策が実際にどうであるかよりも、政策が誰に支持されているかに振り回されていることを示しています」「パンデミックの初めに、多くの学者は政治的分裂が緩和され、この共通の脅威に立ち向かうために連帯すると予想していました。しかし、そうはなりませんでした」と述べています。
それでも、超党派連合や中立的な科学専門家が支持した政策がより高い支持を得たということは、信頼できる科学専門家が党派を超えて人々をまとめられる可能性を示唆しています。論文の筆頭著者でありコロラド大学ボルダー校の博士課程に在籍するAlexandra Flores氏は、「これらの調査結果は、政治的と見られていない科学的な情報源からコミュニケーションすること、そして著名な政治家を危機管理コミュニケーションのスポットライトから遠ざけることが、いかに大事なのかを強調しています」と主張しました。
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