AIが労働者に取って代わるならAIも税金を払うべきなのか?

大手企業はAIに大規模な投資を行いながら、業務効率化のためAIの導入も進めています。これに伴い、大規模な人員削減も進められているため、一部では「AIが労働者に取って代わるならAIも税金を支払うべきなのか?」という議論が白熱しています。
If AI replaces workers, should it also pay taxes? | Technology | EL PAÍS English
https://english.elpais.com/technology/2025-11-30/if-ai-replaces-workers-should-it-also-pay-taxes.html

Amazonは生成AIやAIエージェントによる業務効率化を進めており、この成果として2025年10月には3万人の人員整理を計画していることを発表しました。このように、AIの導入と人員削減を同時に進める企業は少なくありません。AmazonだけでなくMetaやUPSといった企業でも、AIの導入と人員削減が同時に行なわれています。
Amazonのアンディ・ジャシーCEOがAIによる業務効率化によって今後数年で人員削減が進むと言及 - GIGAZINE

労働者の数が減れば納税者の数も減ることになるわけですが、そこで生じるのが「機械やアルゴリズムが人間の仕事を代替するのであれば、人間が払わなくなった税金を、機械やアルゴリズムが負担するべきなのか?」という点です。
ブルッキングス研究所の規制・市場センター所長を務めるサンジェイ・パトナイク氏は、「自動化とAIのトレンドは、税収の減少につながる可能性があります。例えば、アメリカでは税収の約85%が労働所得によるものです」と言及しています。ただし、パトナイク氏はAI向けに特別な税制(AI税)を導入するのではなく、キャピタルゲイン課税を増税することで「AIがもたらすリスク」に対処することを推奨しています。また、パトナイク氏はAI税のような税制は設計が難しく、ゆがみが生じる可能性があるとも指摘しました。
ゴールドマン・サックスはAIが今後10年間で世界のGDPを7%押し上げると予測しています。また、国際通貨基金はAIが2025年から2030年までに年間最大0.8%の成長率に貢献すると予測しました。一方、国際労働機関は世界中の労働者の4人に1人が高所得国に集中しており、ある程度AIに関する仕事に就いていると推定していますが、同時にほとんどの仕事は消滅するわけではなく変化するだけであると予測しています。
ストックホルム産業経済研究所のダニエル・ワーデンシュトローム教授も、AIに特化した課税案に反対しています。その理由のひとつは、AI先進国であるアメリカですら、AIの導入が進んでも失業率の大幅な上昇はみられないだろうと推測しているためです。
また、ワーデンシュトローム教授は「自動化、ロボット、AIとは何でしょう?チップでしょうか?それともヒューマノイドマシン、アプリケーションあるいはコンピュータープログラムでしょうか?正確に定義することは決してできないでしょう。我々は既存のもの、つまりは労働所得、消費所得、キャピタルゲインに課税し続けるべきです」と述べ、AIを正確に定義することが難しいことを強調しました。

国際通貨基金のエコノミストは、AIへの課税について「生産性を阻害し市場をゆがめる可能性がある」として、AIへの課税は推奨しないと言及しています。国際通貨基金は、AI税の代わりに既存の税制を見直すことを推奨しました。
AIおよび労働を専門とするオックスフォード大学の経済学者であるカール・フレイ氏も、AI税を支持していないものの、税制が不均衡になりつつあることを認めています。多くの経済協力開発機構加盟国では、所得税が増加し、資本税が減少していると指摘し、「この不均衡に対処することは、将来の雇用創出技術を支えるために不可欠です」と語りました。
国際ロボット連盟のスザンヌ・ビエラー事務局長は、自動化とロボットが「生産性の向上によって新たな雇用を創出する」と主張しており、AI税の導入は「存在しない問題に起因した間違い」であると語っています。ビエラー事務局長は、企業利益ではなく生産ツール(AI)に課税することは、競争力と雇用に「悪影響を与える」と警告しました。なお、ビエラー事務局長は「企業がロボットやデジタル化といった技術を活用して国際競争力を維持するためにはインセンティブが必要です」「世界は年間約4000万人の労働力不足に直面しており、ロボットはすべての仕事を代替することはできませんが、特定のタスクをこなすことはできます」とも語っています。

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in AI, Posted by logu_ii
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