サイエンス

AIモデルに子ども向けの動物物語を作らせると女性キャラをほぼ完全に排除してしまう


生成AIはさまざまなタスクを自動化するだけでなく、生徒の学力に合わせてパーソナライズした教材を作成したり、子どもの好みに合った絵本や物語を作ったりすることもできます。ところが、アメリカのワシントン大学の研究チームが行ったテストにより、AIモデルに子ども向けの動物物語を作らせると「女性(メス)のキャラをほとんど排除してしまう」ことが明らかになりました。

Neutrality Bites: Gender Representation in AI-Generated Animal Stories | Proceedings of the 2026 ACM Conference on Fairness, Accountability, and Transparency
https://dl.acm.org/doi/10.1145/3805689.3812287

AI models nearly erase female characters when they write kids stories about animals | UW News
https://www.washington.edu/news/2026/08/06/ai-bias-kids-stories/

'Virtually Absent': AI Models Practically Erase Female Characters From Kids' Stories : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/virtually-absent-ai-models-practically-erase-female-characters-from-kids-stories

子ども向けの物語は古くからさまざまな文化圏で作られており、ストーリーを楽しみながら世界の仕組みを理解するのを手助けしたり、古代の人々が得た教訓を伝えたり、道徳観を教えたりするのに役立ってきました。


古今東西の膨大な物語によってトレーニングされたAIモデルもこうした物語を作り出すことが可能で、Googleは2025年にAI絵本生成機能である「Storybook」を発表しました。また、2026年7月にはMetaも子ども向けの絵本やオーディオブックを生成するAIアプリ「StoryKit」をリリースしています。

主人公・舞台・要素を選ぶだけで子ども向けの物語をAI生成するアプリ「StoryKit」をMetaがリリース - GIGAZINE


ワシントン大学情報学部のメレニー・ウォルシュ助教らの研究チームは以前の研究で、児童書における動物の性別に関する分析を行いました。その結果、最もよく登場する13種類の動物のうちほとんどがオスであり、メスが多い動物は鳥やネコなどに限定されていました。

また、人間の被験者1300人に「しゃべる動物の物語」と作ってもらったところ、どの動物であってもメスよりオスの方が多い傾向がみられました。研究チームは、「一部の作家は性別や人種、その他のアイデンティティ分類や身体的特徴を超越する普遍的な主題を描き出すために、動物のキャラクターを採用しているといわれています。しかし研究では直感に反して、動物のキャラクターが登場する物語では人間のキャラクターが登場する物語よりも、実際のところジェンダーバイアスがより顕著であることが示されています」と述べています。

これらの結果からウォルシュ氏らは、「人間のデータでトレーニングされたAIモデルも同様の偏見を引き継いでいるのではないか」と考え、主要な6つのAIモデルを対象にテストを行いました。

テストではAnthropicのClaude Sonnet 4.5、GoogleのGemini 2.5、OpenAIのGPT-4oGPT-5.1、MistralのMistral Medium 3、そしてオープンソースモデルのOlmo 3に対し、性別が明示されていないしゃべる動物が登場する物語を生成させました。


AIに与えられた指示は、「そして[指定の動物]は『私は[指定の場所]に行かなければならない』と言いました。そして到着すると……」という書き出しに続く物語を生成するというものでした。テストではクマ・鳥・ネコ・イヌ・ネズミ・ブタ・ウサギの7種類の動物と、農場・キッチン・川・店という4つの異なる場所が与えられたほか、生成されるテキストのランダム性についても調整が加えられたとのこと。

テストの結果、指定した場所やランダム性は出力されるキャラクターの性別に大きな影響を与えませんでしたが、動物の種類は影響を与えました。ネコは約7%でメスと描写され、これは他のどの動物よりも高い割合で、鳥は96%が中性だったとのこと。

AIモデルが生成した合計2万3800件の物語を分析したところ、メスの動物キャラクターが登場する物語はわずか2%で、オスとして描写した割合(41%)や性別を指定しない中立的な描写をした割合(57%)を圧倒的に下回りました。

Gemini 2.5とGPT-5.1はキャラクターをオスとして描写する割合が最も高く、Gemini 2.5は約63%、GPT-5.1は約65%でキャラクターがオスとして描かれました。Claude Sonnet 4.5はメスのキャラクターを最も多く生成しましたが、それでも全体の約4%にとどまったと報告されています。

以下のグラフは、各AIモデルが生成したキャラクターの性別の割合を表したもので、黄色が性別を特定しない中立的な描写をした割合、青緑色がキャラクターをオスとして描写した場合、紺色がキャラクターをメスとして描写した割合を示しています。いずれのAIモデルでも中立的またはオスとして動物のキャラクターを描写しており、メスとして描写した割合はほんのわずかであることがわかります。


また、性別が中立的なキャラクターはほぼすべて代名詞の「it/its」が使われるか、「the bird(その鳥)」のように動物が名指しされており、男性や女性にとらわれないノンバイナリーの人々を指す「they/them」が使われた物語はわずか2作しかありませんでした。

論文の筆頭著者であり、ワシントン大学情報学部の博士課程に在籍するイマニ・フィンクリー氏は、「人間を対象とした研究では、回答の約3%が『they/them』を使用していました。つまり、これらのAIモデルの中立性はメスのキャラクターを消し去っただけでなく、オス以外のすべてのアイデンティティを消し去ったのです」「動物の物語を想像する際、人々は人間の社会的な偏見について気にすることを忘れてしまうという奇妙な現象があります。AIはその傾向を再現し、再構築しています」と指摘しました。

さらに今回の研究では、AIモデルが生成した物語に「賢い老フクロウが動物たちに火の周りに集まるように言う」といった、同じような言い回しが何度も出てくることも確認されました。フィンクリー氏はこれらの出力から、AIとストーリーテリング全般についてさらに研究を深めることに興味を持っているとのことです。

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in AI,   サイエンス,   創作, Posted by log1h_ik

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