サイエンス

説明できない大気組成を持つレモン型の太陽系外惑星をNASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測

by NASA, ESA, CSA, Ralf Crawford (STScI)

NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、レモンのような形状をしている太陽系外惑星「PSR J2322-2650b」を観測しました。その結果、PSR J2322-2650bの大気組成は非常に特殊であることが判明し、どのように誕生したのかが説明できないと報告されています。

A Carbon-rich Atmosphere on a Windy Pulsar Planet - IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ae157c


NASA’s Webb Observes Exoplanet Whose Composition Defies Explanation - NASA Science
https://science.nasa.gov/missions/webb/nasas-webb-observes-exoplanet-whose-composition-defies-explanation/

PSR J2322-2650bは2017年に発見された太陽系外惑星で、地球から750光年離れたパルサー「PSR J2322-2650」の周囲を公転しています。パルサーは通常数ミリ秒~数秒の間隔で電磁波を放射しており、これらの電磁波は灯台の光のように、地球に直接向けられている時のみ観測可能です。


PSR J2322-2650は1秒間に約300回という高速で回転しながら、主にガンマ線やその他の高エネルギー粒子を放出していると予想されており、これはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の赤外線観測では捉えられません。そのため、PSR J2322-2650は観測の邪魔にならず、科学者らはその周囲を公転するPSR J2322-2650bを詳しく研究できるとのこと。

論文の共著者であり、スタンフォード大学の博士課程に在籍するマヤ・ベレズネイ氏は、「このパルサー星系は、主星に照らされた惑星を観測できる一方で、主星そのものはまったく見えないという点でユニークです」と述べています。

以下が、パルサーを周回するPSR J2322-2650bの想像図です。中心のパルサーは質量が太陽の約1.4倍もありながら、その直径はわずか10~20kmほどと推定されており、非常に強い重力を持っています。そのため、パルサーからわずか160万kmと非常に近い距離を公転するPSR J2322-2650bは、重力によってレモン型に引き延ばされたような形状になっています。


研究チームがPSR J2322-2650bの軌道全体にわたる発光スペクトルを分析した結果、ヘリウムや分子状炭素を主成分とする特異な大気組成を持っていることがわかりました。こうした大気組成はこれまでに観測されたことがなく、すすの雲が大気中に漂い、惑星深部では炭素雲が凝集してダイヤモンドを形成している可能性があるそうです。

今回の研究で主任研究者を務めたシカゴ大学のマイケル・チャン氏は、「この惑星が公転するパルサーは完全に異常です。それは太陽と同等の質量を持ちながら、都市ほどの大きさしかありません。PSR J2322-2650bの惑星大気は、これまで誰も見たことがない新種のものです。太陽系外惑星で一般に観測される水やメタン、二酸化炭素といった分子ではなく分子状炭素、具体的にはC2とC3が検出されました」と述べています。

PSR J2322-2650bの温度はセ氏640~1700度と非常に高いため、この温度で大気中に他の原子が存在する場合、炭素は結合してしまいます。それにもかかわらず分子状炭素が存在しているのは、結合する酸素や窒素がほとんどないからだと考えられています。天文学者らは、これまでに太陽系内外の約150個の惑星を研究してきましたが、分子状炭素が検出可能な惑星は他にないとのこと。

研究チームは、PSR J2322-2650bのように炭素が極めて多い大気組成を惑星が持つのは非常に難しく、既知のあらゆる惑星形成メカニズムに当てはまらないと指摘しています。論文の共著者であるスタンフォード大学のロジャー・ロマーニ氏は、「すべてを知っているわけではないのは良いことです。この奇妙な大気についてもっと知りたいと思います。解くべき謎があるのは素晴らしいことです」と述べました。

なお、パルサーの周囲を公転するPSR J2322-2650bを再現したアニメーションは、以下のYouTube動画で確認できます。

Exoplanet PSR J2322-2650b Orbiting a Pulsar - YouTube

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