「ホワイトカラーを含む全従業員に配達などの仕事を行わせる」とデリバリーサービスが発表して社内から非難の声
2020年から2021年にかけて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴うリモートワークの増加や外食を控える動きにより、世界各地でフードデリバリーサービスの需要が増加しました。そんな中、2021年6月から日本にも進出しているフードデリバリーサービスのDoorDashが、「ソフトウェアエンジニアやCEOを含む全従業員に対し、月1回は配達や顧客サポートなどの仕事を行うことを義務づける」と発表し、ホワイトカラーの従業員からは非難の声が上がっています。
Should DoorDash Executives And White-Collar Employees Be Required To Make Food Deliveries To Customers?
https://www.forbes.com/sites/jackkelly/2021/12/23/could-doordash-executives-and-white-collar-employees-be-required-to-make-food-deliveries-to-customers/
DoorDash will require all employees to deliver goods or perform other gigs, and some of them aren't happy - MarketWatch
https://www.marketwatch.com/story/doordash-will-require-all-workers-to-deliver-goods-or-perform-other-gigs-and-some-of-them-arent-happy-11640300491
DoorDashは12月23日、CEOや役員を含む全てのホワイトカラーの従業員に対し、実際の現場における顧客からの注文に対応して配達などを行うよう義務づける「WeDash」というプログラムを、2022年から実施すると発表しました。DoorDashは創設当初からWeDashを実施してきましたが、COVID-19のパンデミックに伴って中断されており、これが約2年ぶりの復活となります。
2022年からスタートするプログラムでは、従業員が選択できる仕事のバリエーションが追加されています。DoorDashの広報担当者によると、従業員は小売店から顧客までの配達を行う「WeDash」、顧客からの問い合わせなどに対応するカスタマーサービスを行う「WeSupport」、DoorDashに登録する小売店のサポートを行う「WeMerchant」から、行う仕事を選択できるそうです。
DoorDashはホワイトカラーの従業員が自社製サービスを使用して現場の仕事を体感することで、「より顧客のことを理解し、仕事上の障害やバイアスを発見して対処する能力を高める」「DoorDashのビジネスにとって重要な製品や物流インフラストラクチャーの知識を深める」「顧客・配達員・小売店の3者に対して謙虚になり、密に連絡を取り合えるようになる」「DoorDashが地域社会に与える影響を実感し、ビジネスに誇りが持てる」といった効果が期待できるとしています。
アメリカの経済誌・フォーブスの寄稿者であるジャック・ケリー氏は、「リーダーとマネージャーがより共感的であれば、ビジネスの世界はよりよくなるでしょう。CEOが倉庫・フルフィルメントセンター・レストランでの顧客サービス・フードデリバリーがどのようなものか本当に知っていれば、従業員が耐えている日々の課題をより深く理解できます」「技術エンジニアや他の高給取りの専門家が、システムが配達員にとってどのようなものか理解するのを助けます。彼らは配達員が直面する課題を理解するでしょう」とコメント。
ケリー氏は、普段はオフィスやリモートで働いている従業員が混み合ったレストランで料理を受け取り、車や自転車に乗って顧客の下まで料理を運ぶ行程を体験することで、一般的にホワイトカラー労働者より低賃金の時給労働者が行う仕事についての洞察や共感を得られるだろうと主張。「現実の世界で何が起きるかを見ることによって、ホワイトカラーの従業員はその経験を武器に、自分たちの仕事で配達員らを助けるかもしれません」と述べました。
しかし、DoorDashの従業員が利用する匿名交流アプリの「Blind」に立てられたWeDashについてのスレッドには、多くの従業員から非難の声が寄せられています。ある従業員は「(WeDashの業務について)私は契約していません。雇用契約書や業務説明には何もありませんでした」と書き込んでDoorDashを非難しており、「本当なのか荒らしなのかすらわかりません。もし本当なら、絶対に受け入れられません!」と強い拒絶を示す従業員や、「私は配達員を尊敬しているし、自分が注文する時はいつもチップを渡しているが、それは事故などの肉体的な危険にさらされる仕事だと理解しているからです。だからこそ、私は配達員の仕事をしないことにしています」と反対する従業員もいました。
さらに、「配達員になるとカージャックされたり撃たれたりして、文字通り死ぬかもしれません。こんな事態が起きて、遺族がDoorDashに10億ドル(約1100億円)の賠償を求めて勝利するのを見てみたいです。そうなればどんな企業も、二度とこのような愚かな考えを持たないでしょう」と不謹慎なコメントもあった模様。
その一方で、WeDashの理念に共感して賛同する従業員のコメントも書き込まれています。ある従業員は「私は若く、健康で、COVID-19のリスクも低そうです。家に閉じこもっている人に料理や品物を届ける手伝いをしない理由はありません。お金はごくわずかですが、それを補うほどのよい感情があります」と述べたほか、「顧客や配達員、レストランへの共感を持つことはよいことだと思います。配達員がエンジニアやプロダクトマネージャーとペアになって配達ができれば最高です。お互いに学び合う機会でしょう。何が悪いのですか?」と書き込む従業員もいます。
また、「顧客中心に向かわせる素晴らしいリーダーのプッシュは、全従業員がプロセスを直接理解し、会社の使命ではなく給料のことしか考えていない従業員の離職率を高めることにつながります。よくやった」と反対する従業員を皮肉るコメントや、「エンドユーザーとして自社製品を体験した程度で偉ぶってる人が多いのは滑稽です。座って、謙虚になりなさい。シリコンバレーは階級差別とエリート主義が強過ぎる上に、俗物根性やステータスへの執着がすさまじい場所です。『貧しいメキシコ人みたいにテスラで食べ物を配達している場面を誰かに見られたらどうしよう?』なんてことを思っています。このスレッド全体がシリコンバレー全体のセルフパロディです。信じられません」と、反対者を激しく非難するコメントも投稿されていました。
なお、DoorDashによると、WeDashプログラムで従業員が稼いだお金は慈善団体に寄付されるとのことです。
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