古代ローマのコンクリートが驚異的な耐久性を誇る理由の一端が「1900年前のトイレ」から明らかに

by Marie-Lan Nguyen
古代ローマで使われていたコンクリートはローマン・コンクリートと呼ばれ、現代でも当時のコロッセオ(円形闘技場)や水道橋が残っていることからわかるように、驚異的な耐久性を誇っています。そんなローマン・コンクリートの秘密の一端が、「1900年前のトイレ」の研究で明らかになりました。
Mineralized carbonates contribute to the millennial durability of Roman concrete | Science Advances
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aeb0754
Researchers shed new light on ancient concrete’s extraordinary durability - Berkeley Engineering
https://engineering.berkeley.edu/news/2026/07/researchers-shed-new-light-on-ancient-concretes-extraordinary-durability/
How Has Roman Concrete Lasted for Millennia? A 1,900-Year-Old Latrine Offers New Clues About the Material's Impressive Durability
https://www.smithsonianmag.com/smart-news/how-has-roman-concrete-lasted-for-millennia-a-1900-year-old-latrine-offers-new-clues-about-the-materials-impressive-durability-180989115/
Ancient Roman Concrete Keeps Getting Stronger, And The Secret Was Hiding in Hadrian's 2,000-Year-Old Toilet : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/new-study-reveals-why-ancient-roman-concrete-keeps-getting-stronger
ローマン・コンクリートで作られた古代ローマの建築物のいくつかは、同年代に作られた他の建造物の多くががれきになった現代でもなお、旧ローマ帝国地域で目にすることができます。現代のコンクリートでさえ通常は100年ほどで崩れてしまうことを考えると、ローマン・コンクリートの耐久力は驚異的です。
近年の研究により、ローマン・コンクリートの材料である火山灰が石灰や水と反応し、結合能力がある化合物が生成されるポゾラン反応というプロセスが、強度の向上に関わっていることがわかっています。また、製造プロセスに伴って生じるナノ粒子構造が、ローマン・コンクリートに自己修復能力を付与するとの研究結果も報告されています。
「なぜ古代ローマ時代のコンクリートは2000年もの耐久性を誇るのか?」の謎が明らかに - GIGAZINE

今回、カリフォルニア大学バークレー校の工学者であるパウロ・モンテイロ氏らの研究チームは、ローマン・コンクリートの耐久性について調べるため、ローマの東約27kmにあるハドリアヌス帝の別荘(ヴィッラ・アドリアーナ)の「トイレ」に目を向けました。ハドリアヌス帝は西暦117~138年にローマ皇帝に在位した人物で、五賢帝の1人としても知られています。
以下がヴィッラ・アドリアーナの写真です。

by Marie-Lan Nguyen
ユネスコの世界遺産にも登録されているヴィッラ・アドリアーナは古代ローマ建築の傑作ですが、中でも科学者にとって貴重なのは敷地内にあるトイレです。トイレには現代人の手が加えられていないため、古代ローマ時代のコンクリートを当時のままの状態で研究できる、他に類を見ない機会を提供してくれるとのこと。
研究チームはトイレの便座からローマン・コンクリートのサンプルを採取し、研究室で高解像度顕微鏡による観察やX線スキャン、化学組成の分析などを行いました。その結果、予想通りローマン・コンクリートには火山灰と石灰によるポゾラン反応の証拠がみられました。
さらにローマン・コンクリートの細孔や亀裂を調べたところ、カルシウム・炭素・酸素からなる鉱物である方解石が主要な結合剤として機能していることが明らかになりました。方解石は大気中の二酸化炭素が材料中のカルシウム化合物と反応(炭酸化)することで生成され、これが小さなひび割れや細孔を埋めてローマン・コンクリートの密度を高め、建築物の耐久性を向上させていたとのこと。
モンテイロ氏は、「ポゾラン反応は極めて重要ですが、私たちの研究結果は長期間にわたる炭酸化がコンクリートの耐久性を高め、経年劣化に伴うひび割れの修復にも役立つことを示唆しています」と述べました。
今回分析されたローマン・コンクリートのサンプルがCで、その断面がDです。

研究チームはローマン・コンクリートの仕組みを理解することで、現代の専門家が環境負荷の少ないコンクリートを製造できるようになることを期待しています。コンクリートは世界で最も多く消費されている建築材料のひとつですが、その製造過程では膨大な量の二酸化炭素が排出されているため、耐久性の高いコンクリートの製造によって二酸化炭素排出量を軽減することが可能です。
モンテイロ氏は、「方解石は、現代のコンクリート構造物における環境的および機械的ストレスを軽減する可能性を秘めています」「ローマ時代のコンクリートの耐久性向上に関する秘密を解き明かすことで、いつの日か持続可能な現代インフラ開発を実現できることを願っています」とコメントしました。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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