小惑星イトカワのサンプルから「地球の水が太陽風によって生成された可能性」が示唆される
2010年に地球に帰還した日本の小惑星探査機「はやぶさ」から回収されたサンプルを調査した結果、地球に水がもたらされたのは水素イオンを含む太陽風のおかげであった可能性が示唆されました。
Solar wind contributions to Earth’s oceans | Nature Astronomy
https://doi.org/10.1038/s41550-021-01487-w
The Sun Could Be The Mystery Source of Earth's Unexplained Water, Scientists Say
https://www.sciencealert.com/scientists-identify-an-overlooked-source-for-some-of-our-planet-s-water-the-sun
地球の表面の70%は水で覆われていますが、この水がどこから来たのかという謎は完全に解明されてはいません。最も有力な説の1つとしては、約46億年前に地球に飛来したC型小惑星と呼ばれる小惑星が水素原子をもたらしたというものが挙げられています。しかし、C型小惑星のサンプルを調査した以前の研究では、サンプルに含まれる水素と地球の水素の同位体が一致しないことが判明していたため、地球に水をもたらしたものはC型小惑星以外の何かである可能性も考えられています。
オーストラリア・カーティン大学のルーク・デイリー氏らは水の起源を探るため、はやぶさが持ち帰ったS型小惑星「イトカワ」のサンプルを調査。アトムプローブトモグラフィーと呼ばれる、50ナノメートルほどのサイズを観測できる技術を用いてサンプルの表面を観察したところ、サンプルのちりの中に太陽風によってもたらされた水素イオンが埋まっていたことが判明します。その量は岩石1立方メートル当たり約20リットルであったとのこと。
デイリー氏は「太陽風が小さな塵の粒子の表面に水を作り出し、この同位体的に軽い水素が地球に水をもたらした可能性があります」と述べています。また、イトカワに水素が付着したプロセスが他の惑星でも発生している可能性もあり、デイリー氏は「宇宙飛行士が惑星の表面のちりから直接水を抽出できるかもしれません」と指摘しました。
・関連記事
まさにプロジェクトX、これがはやぶさ搭載「イオンエンジン」開発と激闘の記録 - GIGAZINE
地球の「水」はどこからやってきたのか? - GIGAZINE
月と水は太陽系外の天体が地球に衝突することで生まれたと研究で示される - GIGAZINE
水についての科学的知識5選 - GIGAZINE
・関連コンテンツ