サイエンス

「道具を使うと言語スキルが向上する」ことが研究で示される


「道具を使うこと」により活性する脳の部位と、「言語を処理すること」により活性化する脳の部位に重複があることが、世界で始めて脳機能イメージングを用いた調査で示されました。また実験から、道具を使ったタスクを実施することで言語処理能力が向上することも示されています。

Tool use and language share syntactic processes and neural patterns in the basal ganglia
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abe0874

Using Mechanical Tools Improves Our Language Skills | Newsroom | Inserm
https://presse.inserm.fr/en/using-tools-improves-our-language-skills/44084/

Using mechanical tools improves our language skills, study finds -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2021/11/211111154244.htm

言語スキルは長年の間「脳の特定ネットワークを使う複雑なスキル」と考えられてきました。近年になって研究で「言葉の意味を処理する」といった言語機能のコントロールに関わる脳のエリアが運動スキルの処理にも関係していることが示されたものの、脳機能イメージングでは「道具を使うこと」と「言語を処理すること」の関連性は証明されていませんでした。一方で、古神経生物学の分野では、人類において「道具の使用」が広まった時代に言語に関係する脳の部位が大きくなったことも示されています。


この謎を解くため、フランス国立保健医学研究所(Inserm)、フランス国立科学研究センター(CNRS)、クロード・ベルナール・リヨン 1・2大学がスウェーデンのカロリンスカ研究所と協力し、研究を行いました。

2019年、InsermとCNRSの研究者は、道具の扱いに熟達した人はスウェーデン語の構文の細かい点を処理する能力が高いことを研究で示しました。この研究内容を深めるため、CNRSの研究者はfMRIあるいはMRIを使い、行動測定を行う実験方法を開発。そして、被験者を集め、「30cmのペンチを使ったタスク」と「言語演習」をしてもらうことで、それぞれのタスクで活性化する脳領域と、その重複部分を調べました。この結果、世界で始めて「道具を使うこと」と「言語演習をすること」に共通する脳の活動領域が示されました。

「30cmのペンチを使ったタスク」と「言語演習」により活性化する部位は大脳基底核にあるとのこと。


次に研究者は、被験者に対し「ペンチを使った30分のトレーニングの前あるいは後に包括的な言語タスクを行う」ことを求めました。この実験の結果、ペンチを使ったトレーニングによって言語タスクのパフォーマンスが向上すること、またその逆で「複雑な構文を理解する」という言語演習を終えた後に被験者の道具を使うスキルが向上することが明らかになったとのこと。なお、道具ではなく素手で行うトレーニングの場合や、トレーニングを全く行わなかった対照群において、言語パフォーンマンスの向上は見られませんでした。


今回の研究結果は、リハビリテーションの現場でも役立つと考えられています。研究チームは比較的運動能力が高い若者において、言語能力の回復をサポートするためのプロトコルを考案中だと述べています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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