サイエンス

週に1回午前中に「赤い光」を見るだけで視力が改善するという研究結果


「赤色の光を見る」という簡単な方法で高齢者の衰えた視力が改善するという研究結果が、2020年にユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームによって報告されていました。この報告の後も研究は続いており、新たに「赤色の光」の出力や見るタイミングに関する研究報告が発表されています。

Weeklong improved colour contrasts sensitivity after single 670 nm exposures associated with enhanced mitochondrial function | Scientific Reports
https://doi.org/10.1038/s41598-021-02311-1


Morning exposure to deep red light improves declining eyesight | UCL News - UCL – University College London
https://www.ucl.ac.uk/news/2021/nov/morning-exposure-deep-red-light-improves-declining-eyesight

UCLの研究チームは、2020年に「赤色の光を1日3分間見る」という方法で加齢に伴って衰えた視力を回復できるという研究結果を発表しました。この方法のシンプルさや、「赤色の光」を照射するデバイスが非常に安価に製造可能であることから、研究が進むことで多くの人の視力回復に役立つことが期待されていました。

「赤い光を1日3分間だけ見つめる」ことで衰えた視力を改善できるとの研究結果 - GIGAZINE


上記の研究では、「波長が670ナノメートルの赤色の光」が網膜のミトコンドリアのエネルギー生成能力を改善させることで視力が改善することが判明していました。新たな研究では赤色の光を見る適切なタイミングを確かめるべく、20人の被験者を対象に「8時~9時の間に赤色の光を3分間見させて、3時間後と1週間後に色覚テストを実施する」という実験を行い、その数カ月後に上記の被験者のうち6人を対象に「12時~13時の間に赤色の光を3分間見させて、色覚テストを実施する」という実験を行いました。

実験の結果、午前中に赤色の光を見た際は平均17%の色覚改善効果が認められ、午後に赤色の光を見た場合は色覚が改善しないことが明らかになりました。研究チームを率いるグレン・ジェフリー教授は「波長が650〜900ナノメートルの範囲の光は、ミトコンドリアの性能を改善してエネルギー生産量を増加させます」「そして、赤色の光を午前中に見ることは、視力低下を改善するための絶対的な鍵です。これまでにハエを対象にした研究で確認したように、ミトコンドリアの活動パターンは1日の間で変化し、午前と午後では光に対する反応が異なります。今回の研究では、人間の網膜でも同様の反応が起こることを確認できました」と述べています。


また、2020年の研究では照度が40mW/cm2の赤色ライトが用いられていましたが、今回の研究では8mW/cm2のライトが用いられたとのこと。以前の研究で用いられた40mW/cm2の光も人間にとっては安全な照度とのことですが、UCLは「今回の研究で照度をさらに下げられることが判明したことは、追加のメリットです」と述べ、より安全な視力改善デバイスの開発に期待を示しています。

ジェフリー教授は、イギリスに拠点を置くLED機器メーカーのPlanet Lightingと協力して、「670ナノメートルの赤色の光」を照射する安価なデバイスの開発に取り組んでいるとのこと。ジェフリー教授は「この方法はシンプルで安全です。670ナノメートルの光によって供給されるエネルギーは、自然環境光によって供給されるエネルギーと比較して大きいわけではありません。近い将来、人々が安価で使いやすいデバイスを利用可能になると確信しています」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1o_hf

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