サイエンス

ドナーを必要としない「人工角膜」の移植で失明患者が視力を取り戻す


イスラエルの新興企業・CorNeatが2021年1月11日に、ドナーを必要としない人工角膜の移植手術に成功したと発表しました。手術を受けた男性は、10年前に発症した疾病で角膜が損傷し長年にわたり完全に失明していましたが、術後には家族を視認し、文字を読めるまでに視力が回復したと報じられています。

CorNeat Vision's First Patient Regains Sight Following Artificial Cornea Implantation at Rabin Medical Center, Ending a Decade of Blindness
https://www.prnewswire.com/il/news-releases/corneat-vision-s-first-patient-regains-sight-following-artificial-cornea-implantation-at-rabin-medical-center-ending-a-decade-of-blindness-866070880.html

Artificial cornea restores patient’s vision | Ophthalmology Times
https://www.ophthalmologytimes.com/view/artificial-cornea-restores-patient-s-vision

Synthetic cornea helped a legally blind man regain his sight | Engadget
https://www.engadget.com/synthetic-cornea-helps-a-legally-blind-man-regain-his-sight-101057500.html

Blind man regains sight after receiving first artificial cornea implant by Israel's CorNeat Vision | KrASIA
https://kr-asia.com/blind-man-regains-sight-after-receiving-first-artificial-cornea-implant-by-israels-corneat-vision

イスラエル在住の78歳の男性であるジャマル・フラニ氏は、10年前に角膜の浮腫をはじめとする複数の疾病を患って視力が低下し、最後には失明状態になったと診断されました。そこでフラニ氏は、イスラエルの医療機器メーカーであるCorNeatが開発した人工角膜「KPro」の移植手術を受けることになりました。


フラニ氏への移植手術は1月11日に、イスラエルにあるラビン医療センターで行われました。手術に必要な時間はたったの1時間で、手術も無事に成功しました。手術後のフラニ氏は、視力検査用のボードに書かれた文字を読むことが可能で、立ち会った家族を自分の目で見ることもできたとのことです。

手術を担当したラビン医療センターの眼科医であるアイリット・バハール氏は、「外科手術は簡単で、結果は私たちの期待を完全に上回りました。 包帯を外した瞬間は、とても感情的なひとときでした。このような場面に立ち会えたのは、医師としての本望です。私は、角膜移植を心待ちにしている数百万人の人生に影響を与えるであろう、このエキサイティングで有意義なプロジェクトの最前線にいることを誇りに思います」とコメントしました。

写真は左からバハール氏・フラニ氏・フラニ氏の娘・CorNeatの共同創設者兼最高医療責任者であるギラード・リトビン氏です。


リトビン氏は、発表声明の中で「何年にもわたる努力の成果であるCorNeat KProがスムーズな手術で移植され、患者が光を取り戻すのを目撃したのは、感動的で夢のようでした。包帯が取れたとき、部屋の中は涙ぐむ人であふれていました。これは、世界中の人々が視力を取り戻せるようにするという目標の出発点であり、CorNeatにとって大切なマイルストーンです」と語りました。

角膜を人工のものに置き換える手術はこれが最初ではありませんが、複雑な手術が必要なためドナーから提供された角膜の移植が失敗した場合の最終手段として用いられるのが一般的です。

こうした従来の人工角膜とは異なり、KProは非分解性の縫合糸を使って移植する方法を採用しているので、眼球の切開が最小限で手術も簡易だという特徴を持っています。また、KProは生物模倣素材で構成されており、移植された部位の細胞増殖を刺激して術後数週間以内に体組織と完全に融合するため、術後の回復も極めて早いとのことです。


CorNeatによると、KProは既に10人の患者への試験的な移植が承認されているとのこと。この最初の試験では、ドナーからの角膜移植に適さないと診断された人や、移植手術が失敗した人が対象となっていますが、2021年の後半にはより幅広い人が対象となる第2相の試験が計画されているそうです。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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