オープン標準の通信プロトコル「Matrix」の2025年はどんな年だったか?

Fediverseでも用いられるオープン標準の通信プロトコルの1つである「Matrix」が、どんな2025年だったかを振り返った記事を公開しています。
Matrix.org - The 2025 Matrix Holiday Special
https://matrix.org/blog/2025/12/24/matrix-holiday-special/

Matrixのマシュー・ホジソン氏とアマンディーヌ・ル・パプ氏はMatrixの2025年を「成熟した年だった」と振り返っています。
2025年10月にフランス・ストラスブールで開催された「The Matrix Conference」の基調講演をまとめる過程で、クライアントサイドだけでもMatrixがほぼすべてのプラットフォームで確固たる独立した実装を実現していることがわかったほか、サーバーサイドも同様の進化を遂げており、リファレンス実装であるSynapseもますます成熟しているとのこと。
GitHub - element-hq/synapse: Synapse: Matrix homeserver written in Python/Twisted + Rust
https://github.com/element-hq/synapse
Matrix対応のチャットアプリ「Element」は、管理インターフェース「Element Admin」を備えた公式AGPL版Synapseディストリビューション「ESS Community」をリリース。「エンドユーザーを強化する機能はFOSSに、企業を強化する機能はProに」という理念に基づき、Synapse Proには大規模導入向け拡張性と有料サポートが継続的に追加されています。
Element Server Suite Community
https://element.io/server-suite/community

同時に、ネイティブRustホームサーバーである「Conduit」ファミリーの拡大と加速も進んでおり、Continuwuity、Grapevine、Tuwunelと進化を遂げています。
Matrix本体での成果としては、まずOpenID connectを介した次世代認証への大規模移行が成功したほか、Project Hydraの第1段階にして最重要フェーズをRoom Version 12に実装し、状態解決の改善と状態リセットの削減を実現しました。
MatrixRTCは、よりシンプルで信頼性の高いシグナリングを実現するSticky Eventsと、権限管理を強化するスロットという形で大幅に改善され、まもなく仕様として正式採用される見込みです。また、Matrixがサーバーに保存するメタデータのフットプリント改善においても大きな進展があったとのこと。
Matrix.orgのホームサーバーの運用面ではさまざまな問題があり、Matrix 2.0への移行速度への不満も数多くあったものの、原因はメンテナンス管理事例(MSC)がまだ最終調整中であることや、Element Xの存在を知らずに旧版アプリを使い続けているユーザーがいるためだそうです。
Matrix.org - Element X
https://matrix.org/ecosystem/clients/element-x/
しかし、現実にはMatrix体験は数年前と比べても見違えるぐらいに改善されており、ユーザーが復旧キーを紛失したりすべてのデバイスを削除したりしない限り、メッセージの復号に失敗する事例は大幅に減少したとのこと。
一方で課題も確実に残っていて、まずはSynapseのリソース削減が挙げられています。ElementチームからはSynapseのデータベース使用量を100分の1に削減するデモが提示されましたが、Project Hydraやその他の堅牢性改善作業に忙殺され、まだ実現できていないそうです。
もう1つの懸念点はmatrix-rust-sdkとSynapseのスライディング同期性能が初期実装時に比べて低下していることです。原因はクライアントサイドの保守性向上のための簡略化とサーバーサイドの変更にあるとみられ、同期性能は良好なものの、最初のベータ版で実現していた「即時同期」には至っていないとのこと。
また暗号化面でも、回復キーを紛失したために履歴を復号できないというユーザーからの訴えが依然として多く寄せられるなど、課題が残されています。対応方法として、回復キーをWebAuthnパスキーやハードウェアトークンに保存する方法や、OpenID connectのIDプロバイダーサイドからクライアントサイドに導出する方法が検討されています。
コアプロトコルではProject Hydraのフェーズ2とフェーズ3に進展があり、ついにユーザーIDをMSC4243に準拠した公開鍵に移行してMatrix IDから直接特定可能な個人情報を排除することで、MatrixのGDPR対応における最後の課題が解消されるとともに、待望のアカウントポータビリティ実現への道筋も整うとのこと。
クライアントサイドでは、ついに補助的APIの一部がボトルネックになる段階に到達。外部アプリをMatrixに統合する方法の改善にも、ウィジェット経由であれWebXDCやその他のイニシアチブにおける開発動向を検討するのであれ、膨大な作業が残されているとのこと。
2026年にどれが実現するかはわからないものの、多くは「どれぐらいの資金提供があるかによる」とのことで、ホジソン氏とル・パプ氏は「財団が最小限の資金で運営される場合、より魅力的なプロジェクトが資金不足に陥り、結局、全員の損失になるということを示唆します」と述べています。
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in メモ, ネットサービス, Posted by logc_nt
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