ガラスなのに粉々に割れずプラスチックのような弾力性を持つ新しいガラスが開発される、「貝殻」の構造を利用
貝殻の内側にある真珠層の構造をヒントに、科学者らが衝撃で粉々にならない、プラスチックのような弾力性を備える新しいガラス素材を開発しました。このガラス素材は、将来的にはスマートフォンのディスプレイに使用されることが期待されています。
Unbreakable glass inspired by seashells - McGill University
https://www.mcgill.ca/newsroom/channels/news/unbreakable-glass-inspired-seashells-333730
Researchers Have Developed a New Kind of 'Unbreakable' Glass
https://interestingengineering.com/researchers-have-developed-a-new-kind-of-unbreakable-glass
一般的にガラスの強度を上げるためには焼戻しや樹脂を使ったガラス同士の接着が行われます。しかし、これらの処理はコストがかかり、また損傷の修復ができず交換を余儀なくされるという問題がありました。
マギル大学の生物工学部准教授であるAllen Ehrlicher氏は、この問題を解決する強度の高い新しいガラスを発表。新しいガラスは通常のガラスの3倍の強度と5倍の破壊靱性を持つとのこと。
生物工学を研究するEhrlicher氏は、真珠層をヒントに新素材を開発することを考えつきました。「自然はデザインの達人です。生物学的に物質の構造を研究し、それがどのように機能するかを理解することは、新しい素材のインスピレーションや、時に青写真を与えてくれます」とEhrlicher氏。
貝殻の内側についている真珠層は、柔らかい素材によって得られる「耐久性」と固い素材によって得られる「剛性」の両方の性質を持っています。これは真珠層が、高い弾性を持つ柔らかなタンパク質がレイヤー状になることで硬度を実現する白亜のような物質によって構成されるため。この構造が並外れた強度を生み出すとのこと。
以下の左側がガラスの構造、右側が真珠層の構造です。
Ehrlicher氏は真珠層の構造を綿密に調べ、理論的には、ガラス片とアクリルを混ぜることで同様の構造を持つガラスを安価かつ迅速に大量生産できることを突き止めました。この方法だと「ガラスの透明度が下がってしまう」という問題がありましたが、アクリルの屈折率を調整することで、従来のガラスと同様の透明度を確保できると考えられています。
新しいガラスは将来的に、スマートフォンのディスプレイに利用されることが期待されています。なお研究チームは今後、スマートテクノロジーを使ってガラスの色・作成法・導電率などを変更できるよう研究を続けていくと述べています。
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