サイエンス

着るだけで綿のシャツより皮膚温度が5度低くなる服が登場、体熱を吸収して外部に放出する新素材


中国・華中科技大学の研究者らが2021年7月8日に、普通の繊維でできた服より体温を5度も低下させることができる新素材を発表しました。新たに開発されたこの繊維は、周囲の大気に吸収されにくい赤外線を反射することで、体熱を外部に放出し体を冷却することができるとされています。

Hierarchical-morphology metafabric for scalable passive daytime radiative cooling | Science
https://science.sciencemag.org/content/early/2021/07/07/science.abi5484

New ‘mirror’ fabric can cool wearers by nearly 5°C | Science | AAAS
https://www.sciencemag.org/news/2021/07/new-mirror-fabric-can-cool-wearers-nearly-5-c

New 'Metafabric' Passively Cools The Human Body by Almost 5 Degrees Celsius
https://www.sciencealert.com/new-metafabric-could-passively-cool-the-human-body-by-almost-5-degrees-celsius

Smart fabric radiates heat to keep you cooler in the sun | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2283614-smart-fabric-radiates-heat-to-keep-you-cooler-in-the-sun/

太陽光から身を守るため、多くの人は明るい色の服を着ます。これには、可視光線や近赤外線を反射して体温の上昇を防ぐ効果がありますが、近赤外線は水の分子に吸収されて体の周囲の空気を加熱するため、冷却効果は微々たるものになってしまいます。

そこで華中科技大学の研究者らは、ポリ乳酸と合成繊維に酸化チタンのナノ粒子を塗布し、それをポリテトラフルオロエチレンの薄膜で覆った繊維を開発しました。この生地は見た目は普通の白い布ですが、可視光や紫外線だけでなく、近赤外線より水分子に吸収されにくい中赤外線を反射する機能があるとのこと。


この繊維の効果を検証するため、研究チームは半分が新素材の生地、もう半分が綿でできたベストを作成してボランティアの大学院生に着用させ、直射日光の下で1時間過ごしてもらいました。そして、ベストの温度をサーマルカメラで計測した結果、新素材でてきている向かって右半分の温度は33.4度、市販の綿でできたもう半分は36.4度と、3度の差が出ました。さらに、ベストに裏側に取り付けた温度センサーで肌の温度を測ったところ、炎天下に1時間いたことで綿の下の肌が31度から37度まで上昇したのに対し、新素材の下の肌は32度までしか上昇せず、5度の差が出るという結果になりました。


また炎天下に放置した自動車を用いた実験でも、新素材で車を覆うと、覆いをつけなかった車に比べて約30度、市販の自動車用カバーを使用した車に比べて約27度も温度が低くなるという結果が得られたそうです。

研究チームによると、この新素材は通常の繊維と同じ設備で服に加工することが可能で、製造コストも一般的な衣類より約10%高くなるだけとのこと。このことから研究チームは、論文の中で「新素材での実験結果は、この新素材がスマートテキスタイルや日光遮断用の製品、ロジスティクスの分野など、さまざまな用途に応用できる大きな可能性を示しています」と述べて、近いうちに新素材でできた服が市販されることが期待できるとの見方を示しました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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