サイエンス

ダイヤモンドを傷つけられるレベルの硬さを持ち半導体でもあるガラスのような素材が開発される


硬く透明なガラスは食器や家具、窓ガラスなどさまざまな用途に使われていますが、原子の構造上ひび割れや傷ができやすい素材です。ところが中国の研究チームが、ガラスの原子構造を採用しながらもダイヤモンドを傷つけられるほどの硬さを持つ、炭素ベースの新たな素材を開発しました。

Discovery of carbon-based strongest and hardest amorphous material | National Science Review | Oxford Academic
https://academic.oup.com/nsr/advance-article/doi/10.1093/nsr/nwab140/6342164


Chinese scientists develop glass as hard as a diamond | South China Morning Post
https://www.scmp.com/news/china/science/article/3144260/chinese-scientists-develop-glass-hard-diamond

World's strongest glass can scratch the surface of a diamond
https://newatlas.com/materials/worlds-strongest-glass-scratch-surface-diamond/

Scientists Discover How to Make Glass So Hard, It Can Even Scratch Diamond
https://www.sciencealert.com/this-record-new-type-of-glass-is-so-hard-it-can-even-scratch-diamond

炭素の同素体であるダイヤモンドは、各炭素原子が隣り合う4個の原子と共有結合した結晶構造を持つ、極めて硬い物質です。その性質から、ダイヤモンドは単に宝飾品として珍重されるだけでなく、研磨剤やカッターといった用途にも活用されています。ダイヤモンドなどとは対照的に、原子や分子が規則正しく並んでいない物質は非晶質(アモルファス)と呼ばれ、ガラスもアモルファスに含まれます。

以前から硬い素材の開発を行ってきた中国・燕山大学の研究チームは、「ガラス状でありながら非常に硬い素材」の開発を目指して、60個の炭素原子で構成されたサッカーボールのような球状分子・バックミンスターフラーレンを押しつぶす実験を行いました。実験では、研究チームは25ギガパスカル(GPa)という極端な圧力を加え、さらに1000度~1200度という高温でバックミンスターフラーレンを熱しました。

また、バックミンスターフラーレンを一気に高圧高温の状態にするのではなく、12時間以上かけて徐々に熱と圧力を上げていき、その後はゆっくり冷却したとのこと。以前にもバックミンスターフラーレンを押しつぶした研究チームはあったものの、極端な高温高圧条件でダイヤモンドが形成されてしまうことを恐れ、これほど極端な条件を試したチームはなかったそうです。

その結果、研究チームは「AM-III」というガラス状の物質を作り出すことに成功しました。以下の写真がAM-IIIであり、顕微鏡で観察したところ、ガラスと同じ無秩序な原子の並びの中に小さな結晶構造が混ざっていることが確認されています。

by Zhang, et al., National Science Review, 2021

研究チームがAM-IIIの特性について調査したところ、AM-IIIはダイヤモンドの剛体を押し込んで硬さを調べる「ビッカース硬さ試験」で113GPaを記録しました。ビッカース硬さ試験における天然ダイヤモンドのスコアは60~100GPaとのことで、AM-IIIは天然ダイヤモンドよりも硬い可能性があるとのこと。

また、天然ダイヤモンドの平らな面をAM-IIIで引っかいたところ、以下の写真のように天然ダイヤモンドに傷がつきました。研究チームは、AM-IIIがこれまでに知られている中で最も硬いアモルファス素材であると報告しています。

by Zhang, et al., National Science Review, 2021

依然としてAM-IIIを商業プロセスで広く使用できるほど生産することは難しいものの、AM-IIIで作られた防弾ガラスは、記事作成時点での主流製品よりも20~100倍頑丈なものになるとみられています。さらにAM-IIIは硬いだけでなく、シリコンとほぼ同じ1.5~2.2eVのバンドギャップを持つ半導体でもあり、高圧・高温といった極端な条件下で機能するデバイスでの使用に適しているとのこと。

AM-IIIはさまざまな形状やサイズで製造可能な点も魅力であり、将来的に武器や太陽電池に用いられる可能性もあるとみられています。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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