サイエンス

新型コロナの入院・死亡リスクを約50%減らす経口治療薬「モルヌピラビル」とは?


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の効果的な治療薬開発が急がれるなか、2021年10月1日に、製薬会社のメルクが経口治療薬「モルヌピラビル」の第3相臨床試験で、COVID-19の入院リスクと死亡リスクを約半分にまで削減できたとする研究結果を発表しました。

Merck and Ridgeback’s Investigational Oral Antiviral Molnupiravir Reduced the Risk of Hospitalization or Death by Approximately 50 Percent Compared to Placebo for Patients with Mild or Moderate COVID-19 in Positive Interim Analysis of Phase 3 Study - Merck.com
https://www.merck.com/news/merck-and-ridgebacks-investigational-oral-antiviral-molnupiravir-reduced-the-risk-of-hospitalization-or-death-by-approximately-50-percent-compared-to-placebo-for-patients-with-mild-or-moderat/

Efficacy and Safety of Molnupiravir (MK-4482) in Non-Hospitalized Adult Participants With COVID-19 (MK-4482-002) - Full Text View - ClinicalTrials.gov
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04575597

Meet molnupiravir, Merck’s Thor-inspired pill that hammers COVID | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/10/meet-molnupiravir-mercks-thor-inspired-pill-that-hammers-covid/

COVID-19のワクチン接種は進みつつある状況ですが、一方でCOVID-19治療薬として期待された イベルメクチンレムデシビルは、臨床試験では十分な効果が確認できなかったことが報告されています。そんな中、アメリカの製薬会社であるメルクは、経口治療薬・モルヌピラビルの第3相臨床試験の中間解析結果を発表しました。

メルクの発表によると、臨床試験ではCOVID-19陽性と診断された患者775人のうち、半数にモルヌピラビルが、残り半数にプラセボ薬が投与されたとのこと。その後、患者を29日間にわたって追跡調査したところ、モルヌピラビルを投与されたグループでは入院・死亡率が7.3%(28件/385件)だったのに対し、プラセボ群は14.1%(53件/377件)であることが示されました。また死亡件数に限定すると、プラセボ群が8件報告されたのに対し、モルヌピラビル群は0件でした。モルヌピラビルの有効性は変異株に対しても一貫していたことも発表されています。


なお、臨床試験の対象となった患者は発症後5日以内で、入院をしておらず、軽症から中等症に分類されました。加えて、いずれの患者も肥満、高齢、糖尿病や心臓病の合併症などリスク因子を最低1つ有していたとのことですが、有効性はリスク因子の影響を受けなかったとのこと。

安全性のデータも有望であり、薬物関連の有害事象の発生率は、モルヌピラビル群で12%、プラセボ群11%と、ほぼ同等でした。

中間結果がポジティブだったことを受け、臨床試験は一時中止。メルクはこれらの研究結果をもとに、アメリカ政府に緊急使用許可の申請書を提出する予定となっています。一方で、研究結果はプレスリリースによって発表されたものであり、まだ査読を受けていないという点には注意が必要です。

モルヌピラビルは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)などのRNAウイルスが複製を行う際に重要になるRNA依存性RNAポリメラーゼという酵素の働きを阻害する働きを持ちます。モルヌピラビルは人間が有する酵素にも影響を与える懸念があるとして、臨床試験の対象から妊娠中の女性は除外されました。


もともとモルヌピラビルはインフルエンザ治療のために開発が進められたものでしたが、2020年にCOVID-19の感染拡大を受けて、メルクとバイオ医薬品企業リッジバック・バイオセラピューティクスが、COVID-19治療薬に発展させるための共同研究を2020年5月に開始しました

COVID-19の治療で使われてきた抗ウイルス薬のレムデシビルは、静脈に投与する必要があり、治療のためには入院の必要がありました。しかし、モルヌピラビルは経口投与であるため家庭でも利用でき、病院のリソースを圧迫しないという点も有益だと考えられています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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