サイエンス

「新型コロナ治療薬のレムデシビルにはほとんど効果がない」とWHOが発表


世界保健機関(WHO)の研究チームが、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬」として期待されている抗ウイルス薬・レムデシビルについて、「臨床試験の結果、ほとんど効果が認められないか、あるいは効果がまったく認められなかった」という報告書を発表しました。

Repurposed antiviral drugs for COVID-19–interim WHO SOLIDARITY trial results - WHO Solidarity trial consortium
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.10.15.20209817v1.full.pdf

WHO: Remdesivir Has "Little or No Effect" as Hospital COVID-19 Treatment
https://www.clinicalomics.com/topics/patient-care/coronavirus/who-remdesivir-has-little-or-no-effect-as-hospital-covid-19-treatment/

Huge COVID study finds remdesivir doesn’t work—FDA grants approval anyway | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2020/10/fda-approves-remdesivir-for-covid-19-but-global-study-finds-it-doesnt-work/

レムデシビルはウイルスのRNA複製を阻害することでウイルスの増殖を防ぐ薬で、本来は感染エボラ出血熱マールブルグ熱の治療薬として開発されました。

新型コロナ治療薬「レムデシビル」が機能する仕組みを分かりやすく説明するとこんな感じ - GIGAZINE


そして、レムデシビルは新型コロナウイルス感染症にも効果があるとして、臨床試験が行われています。2020年5月にはアメリカのアメリカ食品医薬品局(FDA)や日本の厚生労働省も特例で承認し、FDAは10月22日にレムデシビルをCOVID-19の治療薬として正式に承認しました。

「レムデシビル」新型コロナ治療薬にアメリカが正式承認 | 新型コロナウイルス | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201023/k10012677141000.html


WHOの研究チームは30カ国の病院405カ所1万1266人のCOVID-19患者を対象に非盲検ランダム化試験を行い、レムデシビル、ヒドロキシクロロキンロピナビルインターフェロン療法を10日間にわって実施した結果を比較しました。

その結果、レムデシビルを投与された患者の死亡率が、対照群と比較して0.95倍、ヒドロキシクロロキンが1.19倍、ロビナビルが1.00倍、インターフェロン療法が1.16倍であることが判明しました。この結果から、研究チームは「いずれの試験薬も、COVID-19の死亡率に明確な影響を与えなかった」と報告しています。


この報告に対して、レムデシビルを販売する製薬会社のギリアドは声明を発表し、「WHOの研究チームによる臨床試験のデータは、レムデシビルの臨床的有用性を示す強固な証拠と矛盾しており、特に試験デザインの限界を考えると、建設的な科学的議論を可能にするために必要な厳密なレビューを受けていないことを懸念しています」と反発しました。

gilead-statement-on-solidarity-trial-final-clean.pdf
(PDFファイル)https://www.gilead.com/-/media/gilead-corporate/files/pdfs/company-statements/gilead-statement-on-solidarity-trial-final-clean.pdf


ギリアドは、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所による二重盲検ランダム化プラセボ対照比較試験(ACTT-1)では、対照群となる521人の患者が15日で回復したのに対して、レムデシビルを投与された541人の患者は10日で回復するなど、「レムデシビルの投与による臨床的改善が認められた」と主張しています。

投資銀行SVB Leerinkの上級研究アナリストで治療研究ディレクターでもあるジオフリー・ポージス氏は「ACTT-1の報告書は、レムデシビルにとって良い結果と悪い結果の両方を示しています。レムデシビルの早期投与は実際に回復期間を短縮し、患者の命を救いますが、COVID-19感染者にとってやまばとなる『発症から29日目』での生存率には影響を与えることはできませんでした」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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