住宅価格と世帯年収の70年にわたる関係をグラフにするとこんな感じ
アメリカでは住宅価格の高騰が続いており、2021年6月には過去最高ペースでの上昇を記録したと報じられています。それでは、1950年以降において、アメリカでは住宅価格がどのように推移してきたのか?ということで、さまざまな金融グラフを公開するLongtermtrendsがデータを公開しました。
Home Price to Income Ratio (US & UK) - 73 Year Chart | Longtermtrends
https://www.longtermtrends.net/home-price-median-annual-income-ratio/
まずアメリカにおける「住宅価格/世帯年収の中央値」から算出した比率をグラフにするとこんな感じ。1955年から2020年までの値がグラフ化されていますが、第二次世界大戦後からグラフは下降していき、1960年から2000年頃までは、住宅価格が世帯年収の中央値の4~5倍でしたが、2000年以降はグラフが急上昇。リーマン・ショックが起こる直前の2005年には住宅価格が世帯年収の中央値の7倍にまで膨れあがります。その後、バブルがはじけるとグラフは急降下し、2019年までは5~6倍あたりを前後しますが、2020年以降は再び7倍近くにまでなっていることがわかります。
投資家のマイク・マロニー氏によると、上記の比率は金利に大きく影響されるとのこと。アメリカでは1981年に15%を越えて以降、金利は下降傾向にあります。金利が下がると手頃な家が増えるため、住宅の需要が増加するといわれています。
一方で、近年の住宅価格の上昇を受けて、リーマン・ショックのようなことが再び起こるのではないか?という懸念が持たれています。このため、リーマン・ショック以降、住宅価格指数として広く利用されている「S&Pケース・シラー住宅価格指数」に注目が集まっています。
S&Pケース・シラー住宅価格指数は、経済学者のカール・ケース教授とロバート・シラー教授によって1980年代に開発された、アメリカの住宅価格動向を表す指標。S&Pケース・シラー住宅価格指数は過去の住宅販売事例のデータをもとに、2000年1月の価格を100として「リピート・セールス・プライシング法」という方法によって算出されます。
リピート・セールス・プライシング法は複数回売買された物件について、その取引価格の差を調べる方法であり、「大幅な経年劣化による価格の下落」や「増改築による価格の上昇」を修正する変数が組み込まれているため、純粋な住宅価格相場を示すといわれています。またS&Pケース・シラー住宅価格指数はアメリカの景気指数としての側面も持ち合わせており、S&Pケース・シラー住宅価格指数が上がれば景気回復が期待できるとして株式やドルが上昇したり、その逆が起こったりするとのこと。
S&Pケース・シラー住宅価格指数(赤)と世帯年収の中央値(黒)をグラフにすると以下のような感じ。基本的には2つのグラフは同様に上昇傾向にありますが、2005年以降は、世帯年収の中央値を超える勢いでS&Pケース・シラー住宅価格指数が上昇しています。一方、2020年においてS&Pケース・シラー住宅価格指数が世帯年収の中央値の上昇を超えている様子はありません。
今度はイギリスにおける「住宅価格/世帯年収の中央値」のグラフ。イギリスでは1950年以降、住宅価格は世帯年収の中央値の4~7.5倍あたりを推移してきました。2000年以降はグラフが上昇傾向にあり、2020年以降は住宅価格が世帯年収の中央値の8倍以上にも膨らんでいます。
イギリスの住宅価格と平均年収をグラフ化すると以下のような感じで、2000年以前の経済ブームや金融バブルにおいて、住宅価格が平均年収を超えることはありませんでした。しかし2000年以降は平均年収の増加を超える割合で住宅価格が高騰しているのがわかります。
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