サイエンス

博物館巡りは生物学的老化を遅らせる可能性があるという研究結果


博物館や美術館などの文化施設を定期的に訪れる文化的な活動が、同じ頻度の運動とほぼ同程度、生物学的な老化の進行を遅らせる可能性があるという研究結果が報告されました。

Does leisure activity matter for epigenetic aging? Analyses of arts engagement and physical activity in the UK Household Longitudinal Study | Innovation in Aging | Oxford Academic
https://academic.oup.com/innovateage/article/10/6/igag038/8669801

Engaging with arts linked to slower pace of ageing | UCL News - UCL – University College London
https://www.ucl.ac.uk/news/2026/may/engaging-arts-linked-slower-pace-ageing

Visiting Museums May Slow Your Biological Aging, Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/visiting-museums-may-slow-your-biological-aging-study-finds

世界保健機関は2019年の報告書で「芸術が精神的な健康と幸福感を高め、トラウマの影響を軽減し、認知機能の低下、虚弱、早期死亡のリスクを低下させる」と指摘しました。これに関連してカナダでは医師が患者に美術館への無料入場を提供する取り組みがあったり、スイスのヌーシャテル市が医師の診断書をもらえば無料で美術館に入れるという「芸術療法」を2025年にスタートさせたりと、「芸術を処方する」という取り組みが広がりつつあります。

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そこでユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームは、芸術や文化活動への参加が健康に良い影響を与えているかどうかについて、生物学的老化を基準に調査を実施しました。

研究では、イギリスの世帯縦断研究に記録された2010年から2012年の成人3556人のデータを分析しました。データには、「生物学的加齢」の推定値を提供する「エピジェネティッククロック」と、参加者が芸術活動や文化活動にどのくらいの頻度で参加しているかといった情報が含まれています。芸術活動や文化活動には図書館や博物館を訪れることのほか、美術展に行くこと、工作、絵画、歌、ダンスなど、さまざまなものが含まれます。

分析の結果、文化活動を少なくとも週に1回行う人ほど、生物学的加齢の兆候が遅いことが発見されました。また、この結果は中年層で最も顕著であり、触れている芸術や文化活動の多様性が高いほど老化の兆候が軽減されることも判明しました。


研究では個人の老化を測定するために7種類のバイオマーカーが用いられました。そのうちの1つである「DunedinPACE」と呼ばれる血液エピジェネティックバイオマーカーによる測定では、年に3回未満しか芸術活動を行わなかった人と比較して、年に数回程度の活動では老化進行が約2%、月1回程度では約3%、週1回以上では約4%遅いことと関連していました。

研究チームは、教育水準や収入、身体活動量、喫煙、飲酒、慢性疾患の有無、うつ症状など、老化に影響しうる要因を統計的に補正した後でも、文化活動への参加頻度と老化速度の低下との関連性が維持されたと報告しています。


論文の筆頭著者であるUCLのデイジー・ファンコート氏は「今回の結果は、芸術が生物学的レベルで健康に及ぼす影響を示しています。研究は、芸術や文化活動への参加が、運動と同様に健康増進行動として認識されるべきであるという証拠を提供します」と語りました。また、UCLの疫学者であるフェイフェイ・ブー氏は「本研究は、芸術や文化活動への参加が生物学的老化の速度を遅らせることと関連していることを示す最初の証拠を提供するものです。芸術活動は運動と同様に、ストレスを軽減し、炎症を抑え、心血管疾患のリスクを改善することが示されています」と述べています。

ただし、この研究は観察研究であり、「博物館へ行くことで直接的に老化が遅くなる」と因果関係を示したものではない点には注意が必要です。また、もともと健康状態や経済状況に余裕のある人ほど文化活動へ参加しやすいという可能性も考えられるため、因果関係の解明にはさらなる研究が必要です。その上で、長寿を促進するライフスタイルの中で、これまであまり注目されていなかった概念として、芸術活動や文化施設の訪問が健康維持に役立つ可能性があるという点が重要だと研究者らは述べています。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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