1日1600円で「Twitterの憲法改正後押し作戦」に雇われるケニアのインフルエンサーたち
Firefoxブラウザなどで知られるMozilla Foundationの研究チームが、ケニアで進行中の憲法改正議論に関して「Twitterトレンドのねつ造作戦」が実行されていると発見しました。この作戦に参加したインフルエンサーには1日10~15ドル(約1000~1600円)が支払われていたと判明しましたが、支払いを行った人物/組織は明らかになっていません。
Report_Inside_the_shadowy_world_of_disinformation_for_hire_in_Kenya_5._hcc.pdf
(PDFファイル)https://assets.mofoprod.net/network/documents/Report_Inside_the_shadowy_world_of_disinformation_for_hire_in_Kenya_5._hcc.pdf
Mozilla Foundation - Fellow Research: Inside the Shadowy World of Disinformation-for-hire in Kenya
https://foundation.mozilla.org/en/blog/fellow-research-inside-the-shadowy-world-of-disinformation-for-hire-in-kenya/
“Disinformation influencers” for hire, only $15 a day - Rest of World
https://restofworld.org/2021/kenya-disinformation-bbi-judiciary/
2020年、ケニアのウフル・ケニヤッタ政権が、統治制度の改正や内閣制度の改正、選挙制度の改正、腐敗・汚職防止法の罰則強化などケニア憲法の78項目を改正するというプロジェクト「Building Bridges Initiative(BBI)」を発足しました。
大統領と野党党首が憲法改正案も含む首相制導入などを提案(ケニア) | ビジネス短信 - ジェトロ
https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/11/7383956516fded3d.html
BBIによって改正される項目はケニア憲法全18章のうち13章にまたがるとのことで、ケニア国内では高い注目を集めていましたが、2021年5月に高等裁判所が「大統領は憲法改正手続きを開始する権限を有しない。憲法改正を開始する権限を有するのは議会のみである」として、BBIは違法かつ無効であると命令を下しました。これに対してケニヤッタ政権は控訴手続きを行いましたが、続く二審も一審判決を支持。2021年9月には司法長官が二審判決を不服として最高裁判所に異議申し立てを行っています。
今回Mozilla Foundationの研究チームが発表したのは、このケニアのBBI騒動の間に「ジャーナリストや司法関係者、市民団体関係者を攻撃してBBIを後押しする作戦がTwitterで展開されていた」という報告です。研究チームによると、2021年5月~6月という調査期間の中で展開されたBBI支援作戦は少なくとも11件。総参加アカウントは3700個、総ツイート数は2万3000件だったとのこと。ツイートの一例が以下で、ケニアのウィリアム・ルート副大統領がBBIに反対する市民活動家に資金提供を行っていたという無根拠な内容。
Its was quite an easy task stopping reggae. No sweat, just a good plan and perfect execution#WhyRutoStoppedBBI pic.twitter.com/Z0YtpJ4IIq
— CHEROH???? (@Nairobian_bae) May 21, 2021
確認されたBBI支援作戦11件のうち8件がTwitterのトレンド入りを果たしており、参加者にはケニア国内におけるインフルエンサーもいた他、有名人のなりすましアカウントや女性のセクシーな画像をプロフィールに表示してフォロワー数を稼ぐボットアカウントも多数確認されています。
研究チームがBBI支援作戦に参加したインフルエンサーに行った聞き取り調査では、1日に3つの作戦に参加すると10~15ドルの報酬を受け取れるそうで、ケニアの平均月収やツイートの労力から考えると「儲かるビジネス」とのこと。こうした報酬はケニアで圧倒的シェアを誇るモバイル決済サービスのM-PESAを通して支払われたそうですが、支払いを行った人物/団体は明らかになっていません。
今回の調査結果について、研究チームのブライアン・オビロ氏は「この混乱の中で、Twitterは何もしていません。Twitterにおいて悪意のある人物が偽アカウントを運営し、偽のエンゲージメントを作成し、トレンドアルゴリズムをハイジャックして何百万人ものケニア人を操っています」と強く批判。今回の発表に対して、Twitterはプラットフォームの操作およびスパムポリシーに違反したケニアのアカウント100個以上に対して措置を講じています。
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