生き物

カモが人間の悪口を学習したとの報告、「お前は大バカだ」という暴言やドアが閉まる音を鳴き声で再現

by Ed Dunens

動物の中には人間の言葉を模倣した鳴き声を発する種類が存在し、人間の言葉をしゃべるオウムなどがしばしば話題になります。新たに、オーストラリアで飼育されていたニオイガモが「お前は大バカだ」という暴言を人間から学習して鳴くようになったという事例が、学術誌のフィロソフィカル・トランザクションズBで報告されました。

Vocal imitations and production learning by Australian musk ducks (Biziura lobata) | Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rstb.2020.0243

These Australian Ducks Can Learn to Swear Like People, And Biologists Are Excited
https://www.sciencealert.com/vocal-researchers-have-discovered-that-an-australian-musk-duck-would-swear-while-trying-to-mate

‘You bloody fool’: Australian talking duck proves birds can imitate speech | Australia news | The Guardian
https://www.theguardian.com/australia-news/2021/sep/07/you-bloody-fool-australian-talking-duck-proves-birds-can-imitate-speech?CMP=gdnaus_yt

Confirmed: A duck named Ripper learned how to say “You bloody fool!” | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/09/confirmed-a-duck-named-ripper-learned-how-to-say-you-bloody-fool/

鳥が人間の言葉を模倣する事例はオウムやインコ、ヨウムなどで確認されており、イギリスの動物園では「うせろ」「太ったクソ野郎」などと口にするようになったヨウムが、子どもたちへの影響を考えて公開中止になったこともあります。

来園者に「太ったクソ野郎」 罵倒するヨウム、公開中止:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASN9Z6JFPN9ZUHBI03C.html

ニオイガモはオーストラリア南部やタスマニアに分布するカモの一種であり、繁殖期に麝香(じゃこう)に似た体臭を発することからその名が付けられました。カモは人間の言葉を模倣することが知られるオウムやインコ、キュウカンチョウなどとは遠く離れた種類であり、これまでカモが人間の言葉を発する事例は報告されていませんでした。

ところが、オーストラリアの首都キャンベラ近くにあるティドビンビラ自然保護区で1980年代に飼育されていた「リッパー」というニオイガモは、人間の言葉を発したという記録が残されていました。ニオイガモのオスは攻撃的なため飼育されることは少ないそうですが、1983年に誕生したリッパーは例外的に、卵からかえった後は人間の手で育てられたとのこと。

長らく他のニオイガモと離れて暮らしていたリッパーは、次第に「飼育員が発したと思われる暴言」や「ドアを閉める音」を模倣するようになりました。そして1987年にオーストラリアの研究者であるピーター・フラガー博士が、交尾中のリッパーが発した鳴き声を記録しました。フラガー氏によって録音されたリッパーの鳴き声は、以下の埋め込みムービーで聞くことができます。

Talking duck in Australia can say 'you bloody fool' after learning to imitate human speech - YouTube


「You bloody fool!(お前は大バカだ!)」と言っているように聞こえる鳴き声に……


「バタン、バタン」というドアが閉まる音にそっくりの鳴き声が確認できます。


長らくフルガー氏の記録は忘れ去られていましたが、オランダ・ライデン大学で動物の行動を研究するカレル・テン・ケイト教授が鳥の発声に関する本を読んでこの発見について知り、既に引退していたフルガー氏に連絡したとのこと。ケイト氏は、「最初にこの記述を読んだ時、『デマだ、あり得ない』と思いました」と語っていますが、実際に録音を聞かせてもらったことでフルガー氏の発見が真実だと確信したそうです。

また、フルガー氏は2000年にもティドビンビラ自然保護区で飼育されていた別のニオイガモが、マミジロカルガモという全く違う種類の鳥の鳴き声を模倣する鳴き声を録音していました。また、録音は残っていないものの、イギリスに住む個人からは「近くに住んでいたポニーが鼻を鳴らす音」「庭師の言葉と思われる『Hello』という声」「鳥の飼育係のせきの音」「回転式扉がきしむ音」などをニオイガモが模倣したという報告が寄せられたとのこと。

ケイト氏とフルガー氏は超音波検査で1987年と2000年の録音を分析し、模倣された音とよく一致することを確認したことから、ニオイガモには音声を模倣する能力があると結論づけています。なお、リッパーの「You bloody fool(お前は大バカだ!)」のように聞こえる鳴き声について、ケイト氏は「Fool(バカ)」に聞こえる部分が実際は「Food(食べ物)」であり、飼育員が冗談で「You bloody food」と言っていたのを模倣した可能性があると主張しています。

by Ed Dunens

ニオイガモが音声学習能力を持っている理由については、親が一度に数羽の子どもしか産まず、完全に成長するまで親と一緒に過ごすことが関係しているかもしれないとのこと。「リッパーのように孤立して育てられたニオイガモは、おそらく人間の世話人への強い愛着を持ちます」と、研究チームは述べました。

また、ニオイガモはその他の音声学習能力を持つ鳥とは系統樹で離れた種であることから、オウムやキュウカンチョウとは独立して音声学習能力を進化させた可能性があるとのことです。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by log1h_ik

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