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プールの自動清掃ロボットを激安展開して急成長中のスタートアップ「Seauto」が歩んだ道のり


家庭用プールを持っている家では、人件費の高騰に伴ってプール清掃のコストが問題となっているため、近年は「家庭用プールの自動清掃ロボット」の需要が高まっています。そんな家庭用プールの自動清掃ロボット市場に参入し、わずか数年で存在感を強めている中国のスタートアップ・Seautoについて、中国のテクノロジー系スタートアップ専門メディア・36Krが報じています。

At USD 90 per unit, Seauto is quietly sweeping the pool robot market
https://kr-asia.com/at-usd-90-per-unit-seauto-is-quietly-sweeping-the-pool-robot-market


日本には家庭用プールを持っている家が少ないため、「家庭用プールの自動清掃ロボット」と聞いてもピンとこない人が多いかもしれません。しかし、この市場は40年以上前から存在しており、世界全体の家庭用プールの自動清掃ロボットの売上高は、2024年に10億1800万ドル(約1580億円)に達しています。

中国の深センに拠点を置いているSeautoは、2021年に創業された家庭用プールの自動清掃ロボット専門のスタートアップです。北アメリカとヨーロッパを中心に展開し、多くの国際的メーカーより大幅に安い199~399ドル(約3万1000~6万2000円)で販売しています。


Seautoの売上高は、創業からわずか3年後の2024年に1400万ドル(約21億7000万円)に達し、Amazonの該当カテゴリーで4位の売上高を記録しました。2025年は第1四半期の時点で2024年全体を上回る出荷台数を達成し、黒字化することに成功したとのこと。

Seautoの創業者である鄧卓明氏は36Krのインタビューに対し、「現時点では1ユニットあたりのコストは90ドル(約1万4000円)以下です。さらに価格を下げても、まだ利益を上げる余地があります」と語っています。


多くの同業他社はロボット掃除機から家庭用プールの自動清掃ロボットに参入していますが、鄧氏のバックグラウンドはそれらとは異なります。鄧氏は大学卒業後、SMICとMediaTekでチップ設計に関わっていましたが、やがてiFlytekのロボット部門に加わって無人船や水中探知システムなどに携わりました。鄧氏は、「防水やバッテリーの密閉といった問題は、以前にも経験したことがあります」と語っています。

2019年までに消費財へ目を向けるようになった鄧氏は、家庭用プールの自動清掃ロボットという分野に可能性を感じたとのこと。その年のうちにスタートアップのコンテストに応募したものの、「カテゴリーが魅力的ではない」「Amazonの売上データが不足している」といった理由から投資を受けることはできませんでした。

しかし鄧氏は諦めず、深センに70平方メートルのオフィスを借りて小規模なエンジニアリングチームを編成し、独自に家庭用プールの自動清掃ロボット開発を進めました。中国にはモーターメーカーが山ほどあるものの、家庭用プールの自動清掃ロボットに適したものを製造するメーカーはなかったため、自らブラシレスDCモーターやギアボックス、センサーなどを開発したとのこと。生産効率を向上させるため、Seautoは現地調達の部品を使用し、自動化設計を採用することで人件費を抑え、1ユニットあたりのコストを抑えています。

Seautoが開発するロボットは18~80平方メートルのプールから堆積物・葉・汚れを除去するという、プール清掃の基本的な作業に重点を置いています。コンパクトなサイズにもかかわらず多くの同業他社より大きなゴミタンクを備えており、返品率は業界標準を大きく下回る2~3%にとどまっているそうです。

36Krのインタビューに対し、鄧氏は「これらのロボットができることを考えると、価格は300~400ドル(約4万6000~6万2000円)程度でなければなりません。それが上限なのです。実際に清掃機能が大きく向上しない限り、それ以上の価格設定は単なる『IQ税(智商税、判断力が低いせいで無駄な買い物をした時に使う言葉)』にすぎないのです」と述べました。


成長する多くのスタートアップが従業員数を200~300人に増やす中、Seautoの従業員数はわずか40人強とスリムな体制です。Seautoの資金の大部分はエンジニアリングに投入されているそうで、鄧氏は「水中環境は単純です。実行可能な技術的手段はそれほど多くありません」と述べています。

一般にプール清掃業者は、ケーブル接続された機器を使ってゴミを吸い取っており、この作業を自動化するには水中でのナビゲーションや信号干渉といった問題に対処する必要があります。水中にはカメラで捉えられるような明確な視覚的特徴がないため、Seautoは潜水艦誘導や沖合の石油探査などで用いられる「USBL(Ultra Short Base Line)音響測位システム」を独自開発したとのこと。このシステムによって、Seautoの自動清掃ロボットは水中でのリアルタイム測位を実現しています。

Seautoは自社で家庭用プールの自動清掃ロボットを販売するだけでなく、他社と共同で立ち上げたブランドへの部品納入も行っています。鄧氏は、「予約が殺到しています。新規のお客様から連絡が来るのですが、対応できません。既存のお客様からの注文に応えようとしているだけです」と述べ、Seautoの好調ぶりをアピールしました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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