サイエンス

肥満や糖尿病を治療する経口薬「オルフォグリプロン」は経口セマグルチドよりも血糖と体重を大きく改善できるという臨床試験結果


GLP-1受容体作動薬は「食欲を抑える」「インスリンの分泌を促す」といった目的で2型糖尿病や肥満の治療に使われており、「オゼンピック」や「ウゴービ」など注射薬のセマグルチドの知名度が高い一方で、飲み薬にも選択肢が増えつつあります。アメリカ・テキサス大学のフリオ・ローゼンストック氏や京都大学の矢部大介氏らの研究チームは、経口GLP-1薬のオルフォグリプロンを錠剤の経口セマグルチドと直接比較した臨床試験の結果を報告しました。

Efficacy and safety of once-daily oral orforglipron compared with oral semaglutide in adults with type 2 diabetes (ACHIEVE-3): a multinational, multicentre, non-inferiority, open-label, randomised, phase 3 trial - The Lancet
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(26)00202-3/abstract

expert reaction to ACHIEVE-3 trial results about efficacy and safety of once-daily oral orforglipron compared with oral semaglutide in adults with type 2 diabetes | Science Media Centre
https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-achieve-3-trial-results-about-efficacy-and-safety-of-once-daily-oral-orforglipron-compared-with-oral-semaglutide-in-adults-with-type-2-diabetes/


アメリカ・テキサス大学サウスウエスタン医療センターの内分泌専門医であるフリオ・ローゼンストック氏と、京都大学大学院医学研究科の矢部大介氏らの研究チームは、2型糖尿病と診断された人が最初に処方される治療薬の一つである「メトホルミン」による治療中で血糖コントロールが不十分な成人2型糖尿病患者を対象に、医薬品製造会社のイーライリリーが製造した経口GLP-1薬「オルフォグリプロン」と錠剤の経口セマグルチド薬を直接比較した第III相試験の結果をまとめました。第III相試験というのは、実際の治療に近い条件で大人数を対象に効果と安全性を確かめる段階の試験です。

試験は52週間にわたって行われ、アルゼンチン・中国・日本・メキシコ・アメリカの131施設が参加しました。試験にあたり、研究チームは被験者1698人を以下の4グループに分けています。

・オルフォグリプロンを12mg投与するグループ
・オルフォグリプロンを36mg投与するグループ
・経口セマグルチドを7mg投与するグループ
・経口セマグルチドを14mg投与するグループ

研究チームは過去1か月~2か月の平均的な血糖の高さを反映する指標であるHbA1c(ヘモグロビンA1c)がどれだけ下がったかを主な評価項目としました。この数値が低いほど血糖の状態が良いとされます。


まず、試験開始時のHbA1cは平均8.3%でした。そして、研究チームが報告した52週時点のHbA1cの変化は以下の通りです。

・オルフォグリプロンを12mg投与したグループ:-1.71%
・オルフォグリプロンを36mg投与したグループ:-1.91%
・経口セマグルチドを7mg投与したグループ:-1.23%
・経口セマグルチドを14mg投与したグループ:-1.47%

研究チームは、あらかじめ主要評価項目として定めた「臨床試験において新しい薬(オルフォグリプロン)が既存の薬(経口セマグルチド)と比較して劣っていない」ことを示す「非劣性」を達成したことを確認しました。さらに、「錠剤の経口セマグルチドよりも、オルフォグリプロンの方がHbA1cを大きく改善した」と非劣性だけではなく「優越性」も示したと結論づけています。


また、体重の減少幅についてもオルフォグリプロン群の方が大きかったとのこと。研究チームが報告している体重の変化率は以下の通りです。

・オルフォグリプロンを12mg投与したグループ:-6.1%
・オルフォグリプロンを36mg投与したグループ:-8.2%
・経口セマグルチドを7mg投与したグループ:-3.9%
・経口セマグルチドを14mg投与したグループ:-5.3%


研究チームはオルフォグリプロンを「食事や水の制限なしで毎日飲める」よう設計した薬だと説明しています。飲む条件が複雑だと飲み忘れや飲み方のばらつきが起きやすくなるため、毎日の治療ではこの違いが効いてくる可能性があるとのこと。

一方で副作用に関する注意点もあり、研究チームはオルフォグリプロンの方が吐き気や下痢などの消化器系の症状が多く発生し、副作用が理由で治療を中止した人も多かったとしています。また、平均脈拍数の上昇もオルフォグリプロンの方が大きかったとのことです。

この研究結果を受けて、ケンブリッジ大学のマリー・スプレックリー氏は「大規模な直接比較であり臨床的に重要」と評価する一方で、「副作用による中止が多い点は実際の医療現場での続けやすさに影響しうる問題」「(今回行われたのは)1年間の試験なので、より長期の安全性や心血管アウトカムは今後の課題」と指摘しています。なお、心血管アウトカムというのは心臓や血管に関する病気を対象とした研究において、治療や介入が患者にどのような結果をもたらしたかを示す指標です。

研究チームは、飲み薬のGLP-1薬同士を同じ条件で直接比べたことで、効果だけでなく「副作用で治療を続けられるか」といった実用面の違いも評価しやすくなったとまとめています。

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in サイエンス, Posted by log1b_ok

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