「AIは雇用や生産性にほとんど影響を与えていない」と数千人の企業幹部が認める、「生産性のパラドックス」の再来か

AIテクノロジーの発達により、さまざまなタスクをAIに任せられるようになるという期待が高まっていますが、「AIは従業員の生産性を低下させている」という指摘も相次いでいます。そんな中、アメリカのビジネス誌であるFortuneが「数千人の企業幹部がAIは雇用や生産性にほとんど影響を与えていないと認めた」と報じています。
Thousands of executives aren't seeing AI productivity boom, reminding economists of IT-era paradox | Fortune
https://fortune.com/2026/02/17/ai-productivity-paradox-ceo-study-robert-solow-information-technology-age/

1960年代にマイクロプロセッサやメモリチップが登場すると、経済学者や企業はこれらのテクノロジーが大幅な生産性の向上をもたらすと期待しました。当時最新式のコンピューターは膨大な情報を生み出し、詳細な報告書を作成して大量の紙に印刷しましたが、生産性の伸びは鈍化。1948~1973年には2.9%を記録した生産性の向上が、1973年以降は1.1%にとどまりました。
ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のロバート・ソロー氏は1987年の(PDFファイル)記事で、「コンピューター時代は至るところに到来していますが、生産性の統計には現れません」と説明しました。ITテクノロジーの普及と生産性の向上が乖離(かいり)する現象は「生産性のパラドックス(Productivity paradox)」として知られています。
Fortuneは「経営幹部によるAI活用状況に関する新たなデータは、歴史が繰り返されていることを示しています」と述べ、現代のAIテクノロジーの普及においても、同様に生産性のパラドックスがみられると指摘しています。
アメリカの株式市場における代表的な企業群であるS&P 500に含まれる企業のうち374社が決算説明会でAIに言及し、そのほとんどが社内におけるAI導入は好調だと説明しています。しかし、経済紙のFinantial Timesによる2024~2025年の分析では、AI導入が生産性向上に結びついていないことが示されました。
また、全米経済研究所が2026年2月に発表した調査結果では、アメリカ・イギリス・ドイツ・オーストラリアの約6000人のCEOやCFO、その他の企業幹部にアンケートを実施したところ、約90%が「過去3年間でAIが雇用や生産性にほとんど影響を与えていない」と回答しました。しかし、AIに対する期待は依然として大きく、企業幹部らはAIによって今後3年間で生産性が1.4%向上し、生産量も0.8%向上する一方で、雇用は0.7%減少すると予測しています。

2023年にマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らは、AIの活用によって労働者のパフォーマンスが約40%向上する可能性があると主張しました。しかし、近年のデータではAIの導入による生産性の向上がみられず、AIに多額の投資を行ってきた企業幹部らはいつ投資を回収できるのか、果たして効果が現れる日が来るのかを疑問視しています。
資産運用企業のApolloでチーフエコノミストを務めるトルステン・スローク氏は2026年2月の記事で生産性のパラドックスを引用し、「AIは入ってくるマクロ経済データを除いてあらゆるところに存在します。現在、雇用・生産性・インフレのデータにAIの関与は見られません」と述べています。Amazon・Apple・Alphabet・NVIDIA・Tesla・Microsoft・Metaを除くほとんどのS&P500企業では、利益率や収益予想にAIが絡むこともないとのこと。
AIを受け入れつつもその恩恵を感じられないという状況は、現場の労働者の間にも広がっています。人材ソリューション企業のManpowerGroupが19カ国の約1万4000人の労働者を対象に行った調査では、2025年には日常的にAIを使用しているという労働者が13%増えたものの、AIへの信頼性も18%減少したという結果が示されました。
長期的な観点で見ても、社員をAIに置き換えることは大きな損失をもたらすと指摘されています。AIによって仕事が代替されやすい若手社員の採用が減ると、社内の人材育成パイプラインが滞り、中間管理職に就けるような重要な社員が確保できなくなるリスクがあるとのこと。IBMのニッケル・ラモロー最高人事責任者はこのリスクを指摘し、2026年のアメリカにおける初級職採用を3倍に増やす方針を明らかにしました。
社員をAIに置き換えることで将来的に大きな損失が生まれるという指摘 - GIGAZINE

AIテクノロジーと生産性向上について悲観的な見方もあるものの、Fortuneは生産性のパラドックスが解消される可能性があると主張しています。実際、ITテクノロジーの普及は速やかな生産性向上には結びつきませんでしたが、1990年代半ばから2000年代初頭にかけて生産性の急上昇をもたらし、1995~2005年には1.5%の生産性向上がみられました。
スローク氏も、将来的にAIが生産性向上をもたらす可能性があるとしていますが、ITとAIでは異なる点もあると指摘。IT分野の黎明(れいめい)期だった1980年代は、革新的な製品を開発したイノベーターが独占的な価格決定能力を持っており、競合他社が類似製品を開発するまでその状況が続きました。しかし、今日では巨大なAI開発企業による激しい競争が繰り広げられ、AIツールは誰でも安価で使用できるようになっています。
スローク氏はAIによる生産性向上の未来について、企業がどれだけAIを活用し、職場に継続的に取り入れていく意欲があるかに左右されると主張。「マクロ的な視点から見ると、AIの価値創造は製品ではなく、経済のさまざまな分野で生成AIがどのように使用され、実装されるかなのです」と述べました。
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in AI, Posted by log1h_ik
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