生き物

弾丸を超える速さで繰り出されるシャコのパンチをマネできるロボットが誕生


寿司ネタとして知られるシャコは海底に住む節足動物の一種で、大きな足を使って繰り出す打撃はカニの甲羅や貝殻をたたき割るほどの威力で、水槽のガラスにもヒビを入れるほどだといわれています。そんなシャコのパンチのメカニズムをモデル化することで、その強力な攻撃を再現するロボットが開発されました。

A physical model of mantis shrimp for exploring the dynamics of ultrafast systems | PNAS
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.2026833118


Robot mimics the powerful punch of the mantis shrimp
https://www.seas.harvard.edu/news/2021/08/robot-mimics-powerful-punch-mantis-shrimp


ロボットを開発したのはハーバード大学ジョン・A・ポールソン工学および応用科学スクール(SEAS)のロバート・ウッド教授らの研究チームです。シャコをマネできるロボットとは一体どんなロボットなのかは、以下のムービーを見るとわかります。

Robot mimics the powerful punch of the mantis shrimp - YouTube


研究チームによれば、シャコのパンチやカエルの足、カメレオンの舌など、一部の生物は弾性エネルギーを蓄え、素早く放出することで目に止まらないほど高速の動きを実現するとのこと。

シャコのパンチは、「捕脚」と呼ばれるパンチに特化した足で繰り出されます。この捕脚の外骨格がバネのようにしなり、捕脚の前節を後節の内骨格でひっかけることで弾性エネルギーが蓄積されていきます。


そして、留め具となっている内骨格を外すと、捕脚の前節がおよそ2ミリ秒で前にはじき飛ばされます。


つまり、弓矢をギリギリまで引き絞ってから放つことで鋭い矢を射るように、内骨格の留め具を外して弾性エネルギーを一気に放ち、すさまじいパンチを繰り出すというわけです。ただし、このメカニズムはあくまでも仮説であり、実証されたことはなかったとのこと。研究チームの1人で論文の筆頭著者であるエマ・スタインハート氏は「シャコは他の甲殻類に比べて特別な筋肉を持っていません。筋力だけで早い動きを生み出していないということは、シャコが驚異的な加速力でパンチを繰り出すには何か機械的な仕組みが必要になるということです」と述べています。


そこで、研究チームはシャコのパンチのメカニズムを実証するため、大きさは実際のシャコに近く、重量はわずか1.5グラムというロボットを制作しました。このロボットはシャコの捕脚を再現した構造となっており、筋肉の代わりとなるのは捕脚の前節部分を引っ張る細い糸のみです。このロボットでも強力なパンチを繰り出すことができれば、シャコは筋力ではなく骨格構造をうまく使ってパンチを出していることが示されるというわけです。


研究チームが実際にこのロボットで実験を行ったところ、ロボットは秒速26メートルのパンチを繰り出すことに成功しました。このロボットのパンチは本物のシャコのパンチ速度には及ばないものの、研究チームによれば、「車の速度が4ミリ秒で時速93kmに達するのと同等の加速力」だとのこと。また、シャコがパンチを繰り出すメカニズムには4段階があることも研究から判明しました。


論文の共著者でデューク大学生物学科のシェイラ・パティク教授は「この研究は、学際的な共同研究がいかに多くの分野で発見をもたらすかを示すものです。物理モデルを構築し、数学モデルを開発する過程で、シャコのパンチの仕組みをもう一度理解しなおすことで、生物が何度も超高速動作を実行できるような、大きなエネルギーを制御するメカニズムを発見できました」とコメントしています。

また、研究チームはシャコのパンチだけではなく、カエルの高速ジャンプやカメレオンの長い舌をのばす動き、アリがあごを打ち鳴らす仕組みなども、ロボットで再現するアプローチで模倣し研究することができると述べました。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by log1i_yk

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