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App Storeでは未成年でもアダルトコンテンツにアクセスし放題、Appleは子どもを保護する約束を放棄しているという指摘


Appleは2021年8月5日に「Child Sexual Abuse Material(CSAM:児童の性的搾取に関連するデータ)」の拡散を防ぐことを理由にiPhoneの写真やメッセージをスキャンすることを発表しましたが、「かえって子どもの権利が侵害される」として世界各国の人権団体から非難されています。そんな中、テクノロジーの透明性を保つことを目的とするプロジェクトチーム・Tech Transparency Project(TTP)が「AppleはApp Storeで配布されている成人向けアプリが子どもに与えるリスクを放置している」とする調査結果を発表しました。

Apple’s App Store Loopholes Put Children at Risk | Tech Transparency Project
https://www.techtransparencyproject.org/articles/apples-app-store-loopholes-put-children-risk

TTP Investigation: Apple’s App Store Loopholes Put Children at Risk | Campaign for Accountability
https://campaignforaccountability.org/ttp-investigation-apples-app-store-loopholes-put-children-at-risk/

◆App Storeの対応状況
App Storeでは、性的に露骨なコンテンツが飛び交うチャットアプリや、実際に金銭を取引するギャンブルアプリなどの成人向けアプリが数多く配布されています。TTPは生年月日を2007年2月に設定した架空の14歳のApple IDを作成し、それらのアプリをダウンロードできるのかを確かめました。


TPPが14歳のApple IDを用いて「Appleによって17歳以上の年齢制限を付与されているアプリ」のダウンロードを試みたところ、「17歳以上であるかどうか」を確認するポップアップが表示されたものの、「OK」をタップするだけでダウンロードに成功したとのこと。TPPは「AppleはApple IDによってユーザーが17歳未満であることを知っているにもかかわらず、年齢制限のかかったアプリのダウンロードを禁止しませんでした。これは未成年者による成人向けコンテンツへのアクセス防止が、それぞれのアプリに委ねられていることを示しています」と指摘しています。


◆各アプリの対応状況
App Storeでは未成年ユーザーを成人向けコンテンツから遠ざける施策が十分に機能していないことを確認したTPPは、次に成人向けアプリをダウンロードして、実際に14歳のApple IDでアプリを利用できるのかを確かめました。

TPPがマッチングアプリ「UberHoney」をダウンロードして起動したところ、年齢を尋ねる画面は一切表示されず、いきなり性的な画像やムービーが表示されました。また、性的コンテンツが飛び交うチャットアプリ「Hippo - Random Live Video Chat」でも、利用規約で18歳未満の使用禁止を定めているにもかかわらず年齢確認画面が一切表示されなかったとのこと。TPPは、これらのアプリが「あからさまに性的またはわいせつなコンテンツを含むアプリ」の公開を禁じているApp Store Reviewガイドラインに反していると指摘しています。


金銭取引が発生するギャンブルアプリでは、一般的に顔写真付きの本人確認書類を求めるという厳格な年齢確認が行われています。しかし、ギャンブルアプリの「Cash Clash Games」ではアカウント登録時に18歳以上であることを確認するチェックボックスにチェックを入れるだけで成人しているとみなされ、実際に銀行口座を登録して賞金を獲得することができてしまいました。


成人向けアプリの中には、対象年齢に達していない生年月日や年齢を入力すると「まだ利用できない」というメッセージを表示して登録不可にするものもあります。しかし、ゲイの人々向けのマッチングアプリ「Grindr」では、利用不可を示すメッセージが表示された後にウソの生年月日を入力するだけで登録に成功しました。登録成功から24時間以内に、TPPのアカウントは2枚の性的に露骨な写真を含む6件のメッセージを受け取ったとのこと。


性的な利用を主目的としたマッチングアプリ「KinkD」では、年齢入力欄に「14」と入力すると「あなたは18~99歳である必要があります」という警告文が表示され、ウソの年齢を入力するだけで登録に成功。登録成功後は「性的なコンテンツを受信する可能性があります」という旨のメッセージが表示され、不特定多数のユーザーとメッセージや写真の送受信が可能な状態になりました。


TPPによると、「Tinder」「Match」「Skout」といったマッチングアプリでは対象年齢に達していなしことを示す生年月日を入力したり、Facebookアカウントと紐付けたりすると、アカウントの登録が不可能になり、アプリを再インストールしてもアカウント登録不可の状態が続くとのこと。例えば、Tinderで14歳の架空アカウントを登録しようとしたところ、「Tinderを利用するには18歳以上である必要があります」というメッセージと共に利用可能になるまでの残り日数が表示されました。


TPPを運営する非営利組織・Campaign for Accountabilityのエグゼクティブディレクターであるミッシェル・クーパースミス氏は、今回の調査結果を受けて「Appleは、有害なコンテンツからユーザーを守るために、App Storeで配布されるコンテンツを厳格に管理していると主張しています。しかし、Appleは未成年ユーザーの安全を守るための安全策すら用意していません」と述べ、Appleを非難しています。

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in モバイル,   ソフトウェア, Posted by log1o_hf

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