なぜヘビがいないはずの国でヘビの目撃情報が相次いでいるのか?
「ヘビが全く生息していない国」として知られているニュージーランドで、どういうわけかヘビの目撃情報が相次いでいます。海外紙のThe Guardianがこの謎について、目撃例も交えて解説しています。
Case of the mystery sea snakes: why are reptiles washing up on New Zealand’s shores? | New Zealand | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2021/aug/14/case-of-the-mystery-sea-snakes-why-are-reptiles-washing-up-on-new-zealands-shores
Third venomous sea snake turns up, this time on Manawatū coast - NZ Herald
https://www.nzherald.co.nz/northern-advocate/news/third-venomous-sea-snake-turns-up-this-time-on-manawatu-coast/UMDLDKYRMFMDLSXSCWPOHJPSXE/
太平洋の南西、オーストラリア大陸から2000km離れた位置に存在する島国のニュージーランドには、ヘビが1種たりとも生息していません。しかし、昨今ニュージーランドのビーチで、毒ヘビのセグロウミヘビが生きて流れ着いているとの目撃例が相次いで報告されています。
2021年5月、11歳の少年が家族と一緒にノースランドのビーチに出かけた時に、打ち上げられた1匹のヘビを発見したとのこと。少年はヘビを持ち帰って、地元の店で「この生き物は何なの?」と尋ねました。店員が検索したところ、そのヘビは猛毒を持つセグロウミヘビだと判明。幸い誰もかまれることはなく、ヘビも少年によって家まで運ばれる途中に死んでしまったとのことです。
by The Natural History Museum of Los Angeles County
セグロウミヘビを含むウミヘビは、主にオーストラリアと太平洋諸島からの暖かい海流でニュージーランドの海域に運ばれます。しかし、ニュージーランドの海域はウミヘビが繁殖するには冷たすぎるため、本土まで生きたまま到達することは非常にまれ。ウミヘビは一般的に病気であるか、嵐や大きな波に流された場合にのみ上陸します。2018年4月以降は目撃例が途絶えていた状態でしたが、2021年に入ってから3件の目撃例が報告されています。
自然保護局のクリントン・ダフィー氏は「ニュージーランドの人々はヘビを見慣れていないため、地元でよく見るウナギと勘違いしたり、有毒だとは思わなかったりして、どんなふうに対処したらいいかを知りません」と話します。セグロウミヘビの毒は人を殺せるほどの猛毒ですが、その抗毒素は高価かつ貯蔵寿命が短いため、ニュージーランド国内では利用できないとのこと。
オーストラリアの海洋科学者であるVinay Udyawerは「あくまで仮説に過ぎませんが、地球温暖化による海水温の上昇と嵐の発生の増加に伴い、漂着するウミヘビがさらに増加した可能性があります。さらに今後、ニュージーランドのような場所では個体数を維持できなかった種が、海水温が上昇することで定着し始める可能性もあります」と述べました。
Udyawer氏は「セグロウミヘビは臆病な性格で、人をかむことはめったにありません。発見した場合は故意に傷付けたりせず、自然保護局に連絡すべきです」「ウミヘビを長く研究してきた私は、ウミヘビを見るたびにとてもワクワクします。ニュージーランドで野生のウミヘビを見ることは難しいので、人々は野生のウミヘビを目撃することがどれほど特別であるかを認識するべきです」と述べました。
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