生き物

「毒を持つ唯一の猿」の毒は猫アレルギーの原因物質とほぼ同一であることが判明

by Lionel Mauritson

猫アレルギーは猫に触れたり近づいたりすると目がかゆくなったり鼻水がとまらなくなったりするという症状で、猫のフケや唾液に含まれる特定のタンパク質が原因物質(アレルゲン)となって引き起こされるといわれています。そんな猫アレルギーのアレルゲンが、「毒を持つ唯一の猿」として知られるスローロリスの毒にも含まれていたことが判明しました。

Toxins | Free Full-Text | The Toxicological Intersection between Allergen and Toxin: A Structural Comparison of the Cat Dander Allergenic Protein Fel d1 and the Slow Loris Brachial Gland Secretion Protein
https://www.mdpi.com/2072-6651/12/2/86

Primate venom sheds light on why so many people suffer cat allergies
https://phys.org/news/2020-02-primate-venom-people-cat-allergies.html

霊長目ロリス科に分類されるスローロリスは、中央アジアから東南アジアに分布する動物で、霊長類としては唯一毒を分泌する生物として知られています。スローロリスが肘の内側から分泌する毒は、唾液と混ぜて全身に塗りたくることで寄生虫をよせつけない効果があるといわれていますが、毒の具体的な成分と性質は未解明でした。

by Mark Dumont

スローロリスにかまれた人間には猫アレルギーに近い症状が表れることがあるそうで、スローロリスを研究するクイーンズランド大学のブライアン・フライ准教授は以前からスローロリスの毒と猫アレルギーには関連があると主張していました。

そこで、フライ准教授の率いる研究チームがスローロリスの毒に含まれるタンパク質に関連するDNA配列を解析したところ、猫のフケに含まれるタンパク質「Fel d 1」を発現するDNA配列とほぼ同一だったことが判明。このことから、スローロリスの毒に含まれるタンパク質とFel d 1がほとんど同じ分子構造を持つとわかり、フライ准教授の主張を裏付けることとなりました。

人によっては、このFel d 1がアレルゲンとなって猫アレルギーを発症します。つまり、スローロリスにかまれて表れるアレルギー反応は、猫アレルギーとほぼ同じものだというわけです。フライ准教授は「スローロリスが自分の体に毒を塗りたくるのは身を守るため」と考えており、猫がFel d 1を含むフケを出すのもスローロリスと同様の防御システムなのではないかと推測しています。

スローロリスと猫は別の進化系統を歩んでいますが、どちらも進化の中でFel d 1の発現を自然選択的に獲得したと仮定すると、「人間がたまたま猫のフケやスローロリスの毒液にアレルギー反応を示す」のではなく「猫やスローロリスが進化によって、人間の免疫システムを攻撃するような防御兵器を身にまとった」と考えることもできるとフライ准教授は論じています。

by Marko Blažević

フライ准教授は「猫やスローロリスは、捕食者を可能な限り遠ざけるために有毒な防御兵器を進化させたのかもしれません」と語り、今回の研究結果は他の生物に対するアレルギーの研究をさらに興味深いものにすると述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1i_yk

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