「微小な針を並べたパッチ」を貼り付けて毛を再生するハゲの治療法が開発される
頭髪が薄くなったり生え際が後退したりする「ハゲ(男性型脱毛症)」をコンプレックスだと感じる人は多く、市場ではさまざまな治療薬が販売されているほか、発毛を促進する方法を調査する研究者も大勢います。新たに浙江大学の研究チームが、「微小な針を並べたパッチ」を貼り付けることで毛を再生する治療法を発表しました。
Ceria Nanozyme-Integrated Microneedles Reshape the Perifollicular Microenvironment for Androgenetic Alopecia Treatment | ACS Nano
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.1c05272
Treating the 'root' cause of baldness with a dissolvable microneedle patch
https://phys.org/news/2021-08-root-baldness-dissolvable-microneedle-patch.html
一般的な男性型脱毛症の原因には、毛包の周囲の血流が滞ることで、発毛に必要な栄養素やサイトカインの供給が不足することが挙げられます。また、活性酸素が頭皮に蓄積したことにより、酸化ストレスで発毛に必要な毛包幹細胞が死んでしまうことも原因のひとつとされています。しかし、世の中に存在する多くの発毛法は、血流不足や酸化ストレスといった根本的な問題に対処するものではないとのこと。
浙江大学の研究チームは、「セリウムを含有したナノ粒子が、過剰な活性酸素を除去して酸化ストレスを軽減する酵素を模倣できる」という点に着目。セリウムを含有したナノ粒子は皮膚の最外層を通過できないため、研究チームは直接ナノ粒子を毛根近くに送達し、髪の再生を促進する治療法の開発に着手しました。
研究チームはまず、セリウム含有ナノ粒子を生分解性のポリエチレングリコール-脂質化合物でコーティングしました。次に、人間の体内で溶解するマイクロニードルを並べたパッチを作成し、最後にコーティングされたセリウム含有ナノ粒子をヒアルロン酸と混合してマイクロニードルの内部に入れました。マイクロニードルを並べたパッチは、セリウム含有ナノ粒子を毛根の近くに送達するだけでなく、機械的な刺激を与えて毛細血管の新生を促す効果も期待されたとのこと。
そして脱毛クリームによって毛が生えていない部分を作ったマウスを用意し、「セリウム含有ナノ粒子入りのマイクロニードルを並べたパッチ」を貼り付けたグループと、「薬剤のないマイクロニードルを並べたパッチ」を貼り付けたグループで、どれほど発毛効果が違うのかを分析しました。
すると、両方のパッチでマイクロニードルが毛根付近の皮膚を物理的に刺激し、新しい血管を作り出す効果が認められました。また、セリウム含有ナノ粒子を注入したグループでは、早期の皮膚の色素沈着や新しい髪が生える時にみられる化合物の増加など、毛根から毛が生える兆候がより速く見られたそうです。さらにセリウム含有ナノ粒子を注入されたマウスでは、皮膚における酸化ストレス化合物が少ないことも確認されています。
その後も経過観察を続けた結果、ナノ粒子なしのマイクロニードルパッチを貼ったグループや一般的な治療薬であるミノキシジルで治療したグループよりも、セリウム含有ナノ粒子を注入したマイクロニードルを並べたパッチを貼ったマウスの方が速く新しい毛が生えることが判明しました。また、パッチを貼ったことによる重大な皮膚の損傷もなかったとのことで、研究チームはマイクロニードルパッチでセリウム含有ナノ粒子を注入する方法が、男性型脱毛症の患者を治療する有望な戦略であると述べています。
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