はげ治療に進展、幹細胞から皮膚を作ったら毛が生えてきたとの研究結果
薄毛を治療するための方法は、2020年時点では多くが「薄毛の予防」に焦点を当てており、抜け毛を完全に防いだり毛髪を復活させたりする方法はまだ開発されていないのが実情。近年の研究で幹細胞が薄毛治療のカギになるとして注目されていますが、新たに研究室で幹細胞から皮膚を培養したところ、毛が生えてきたという研究結果が科学誌Natureに掲載されました。
Hair-bearing human skin generated entirely from pluripotent stem cells | bioRxiv
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/684282v1.full
3次元的に試験管内で作られた臓器をオルガノイドと呼びますが、ハーバード大学の研究者らはラボで幹細胞から皮膚のオルガノイドを作成しました。4~5カ月にわたって培養を行ったところ、幹細胞は毛包や皮脂腺、神経回路、筋肉、脂肪を含む、複数の層からなる「皮膚」へと成長したとのこと。この皮膚をマウスに移植した結果、マウスの半数の皮膚から毛が生えてきたことから、研究者はこの技術が薄毛治療のほか、がんややけど、皮膚疾患などで脱毛症状を抱える患者にとっても役立つと考えています。
ハーバード大学メディカル・スクールのカール・ケラー博士は「付属物のついた皮膚を培養し、バイオエンジニアリングされた移植片を作り出す技術はまだ実現していません。私たちは人間の多能な幹細胞から複雑な皮膚を生み出すオルガノイドの培養システムをここで報告します」と述べています。
人間の皮膚は何層にも重なる非常に複雑なもので、幹細胞から作り出すには温度のコントロールや、「感覚」を生み出すための水分量が重要になるとのこと。研究者は、体のさまざまな細胞や組織になることが可能な幹細胞を試験管の中でさまざまな成長因子と化学物質とともに培養することで、皮膚のオルガノイドを完成させました。完成した移植片には人間が「感覚」を得るための神経回路を模したものもあります。
今回の研究は臨床試験を行うだけの潜在的可能性があるとのことですが、記事作成時点では「薄毛治療に利用するためには、まだいくつかの疑問点が残っています」と研究者は述べています。
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