AWSによる「タダ乗り」へのオープンソースコミュニティの対抗策
Amazon Web Services(AWS)がオープンソースの分析エンジン「Elasticsearch」を利用した製品「Amazon Elasticsearch Service(Amazon ES)」の商標登録を行ったことへの対抗策として、Elasticsearchは2021年1月にライセンスが変更されました。AWSはライセンスが変更される前にフォーク版を作成することで事態への対応を試みましたが、新たな報道で、Elasticsearch公式Pythonクライアントではフォーク版がブロックされることが判明しています。
Elastic amends Elasticsearch Python client so it won't work with forks then blocks comments • The Register
https://www.theregister.com/2021/08/09/elasticsearch_python_client_change/
データベースマネージャーおよび分析エンジンのElasticsearchは、オランダに拠点を置くElasticによって開発されたサービスで、もともとフリーソフトウェア向けライセンスとして知られるApache License 2.0(ALv2)で提供されていました。
AWSはオープンソースであるElasticsearchを利用して、これまで「Elasticsearchを大規模かつ簡単でコスト効率の良い方法を使用してデプロイ、保護、実行する完全マネージド型サービス」としてAmazon ESを提供してきました。また、ネットワーク暗号化、アクセス制御サポートなど、Elasticsearchのユーザーや開発者が必要とする機能のほとんどを提供するディストリビューションであるという「Open Distro for Elasticsearch」も提供しています。
AWSはAmazon ESに関してElasticと共同開発を行っていないにもかかわらず「Elasticと共同でサービスをリリースした」とツイートし、Amazon ESの商標登録を行いました。Elasticはこれを受けて「明確な商標違反である」と反論し、2019年に商標侵害の申立を行い、2021年にはライセンスそのものを「Server Side Public License(SSPL)」と「Elatic License」のデュアルライセンスへと変更すると発表しました。
オープンソースの著作権を巡るElasticとAmazonとの闘い - GIGAZINE
これを受けてAmazonは、Elasticsearchのライセンスが変更される前にAmazon ESをフォークすると発表。2021年7月にはこのフォーク版が「OpenSearch 1.0」という形でリリースされました。
Amazonがライセンス変更した「Elasticsearch」をフォークしオープンソース版として提供続行することを決定 - GIGAZINE
しかし、2021年8月9日付けでテクノロジー系メディアであるThe Registerは、「ElasticがElasticsearchの公式Pythonクライアントがフォーク版では機能しないように修正した」と伝えています。Elasticsearchの公式Pythonクライアントは「elasticsearch-py」としてGithubで公開され、これまでに20万2000回以上ダウンロードされています。
このelasticsearch-pyのソースコードが、「データベースがElastic製品なのかフォークなのかがチェックされる」という形に変更されたことをelasticsearch-pyを利用している開発者が確認しました。応答のHTTPヘッダーに「X-Elastic-Product」がなかったり、「X-Elastic-Product」HTTPヘッダーの値が「Elasticsearch」でなかったりすると、エラーが発生するとのこと。報告が行われたスレッドでは、ElasticsearchとOpenSearchの両方で動作するオープンソース製品を開発していた開発者から、落胆の声が上がりました。
なお、Elasticは上記のスレッドのコメントを削除し、「解決済みの問題」とすることでコメントを制限しています。
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