サイエンス

時計を使わずに時間を測定するための「ミニ宇宙」を創造する実験に成功


イギリスのバーミンガム大学の研究チームが冷却原子を使い、時計に頼らず時間の流れを測る実験を行いました。この研究は、時間が外から与えられるものではなく、閉じた量子系の内部変化から生まれる可能性を調べたものです。

Testing the problem of time with cold atoms | Phys. Rev. Research
https://journals.aps.org/prresearch/abstract/10.1103/1h9j-df4k

Scientist creates 'mini‑universe' to measure time without a clock
https://phys.org/news/2026-06-scientist-miniuniverse-clock.html

実験では2万4000個のルビジウム87原子を極低温まで冷やし、ボース・アインシュタイン凝縮体という特殊な状態にしました。この原子の集まりは外部からほぼ孤立しており、研究では小さな「ミニ宇宙」として扱われました。

バーミンガム大学のジョバンニ・バロンティーニ教授が率いる研究チームは、このミニ宇宙を光の薄い壁で2つの領域に分け、観測する側を「明るい領域」、観測しない側を「暗い領域」として、原子がその間を行き来できるようにしました。


明るい領域では、原子の雲が広がったり縮んだりします。研究チームは広がり始める瞬間を「ビッグバン」、縮んで戻る瞬間を「ビッグクランチ」に似た動きだと述べています。

以下は冷却原子で作ったミニ宇宙の時間変化を示した図。光の薄い障壁によって、観測される明るい領域と観測されない暗い領域が分けられ、原子雲が移動しながら膨張と収縮を繰り返します。


さらに、研究チームは外部の時計を使わず、明るい領域の内部変化だけで出来事の順番を並べました。その手がかりとして使われたのが、原子の散らばり具合を表すエントロピーです。

原子が明るい領域と暗い領域の間で移動するとエントロピーも変化します。研究チームはこの変化から「エントロピー時間」を定義し、エントロピーが動くと時間が進み、変化が止まると時間も止まるように扱いました。

以下のグラフは外部の実験室時計(横軸)に対して、ミニ宇宙内部で定義したエントロピー時間(縦軸)がどのように進むかを示しています。エントロピーの交換が大きいほど内部時間は速く進み、交換が小さいほど遅くなっています。


さらに研究では、通常は外部時間を使うシュレーディンガー方程式をエントロピー時間を使う形で導きました。その計算結果は、実験で観測された原子雲の広がりをよく再現したとのこと。

実験の結果、エントロピー時間によって膨張と収縮を繰り返す明るい領域の変化を自然な順番で並べられることが示されました。光の壁を高くして原子の移動を抑えると、エントロピーの交換が減り、内部時間の流れも遅くなりました。

研究チームは、今回の成果は時間の流れがエントロピーの変化から現れるという考えを実験室で確かめる手がかりになると述べています。また、冷却原子を使えばビッグバンやビッグクランチ、量子宇宙論に関わる時間の問題を、制御された環境で調べられる可能性があると論じました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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