ビッグバン直後から10億年ほどの初期宇宙の時間の流れは極端なスローモーション状態だった
大質量ブラックホール・クエーサーを時計代わりに利用した研究により、ビッグバン直後の宇宙は今日よりも時間の流れが5倍も遅い(現在の5分の1の早さ)、スローモーションのような状態だったことが明らかになりました。
Detection of the cosmological time dilation of high-redshift quasars | Nature Astronomy
https://doi.org/10.1038/s41550-023-02029-2
Quasar 'clocks' show Universe appears to run five times slower soon after the Big Bang - The University of Sydney
https://www.sydney.edu.au/news-opinion/news/2023/07/04/quasar-clocks-show-universe-appears-five-times-slower-after-big-bang-einstein-relativity.html
アインシュタインの一般相対性理論は、遠い宇宙、つまり古い宇宙は現在よりもはるかにゆっくりとした速度であることを意味していますが、実際には時間を振り返ることは困難です。
今回、シドニー大学のゲラント・ルイス教授とオークランド大学のブレンドン・ブリュワー教授は、20年にわたるクエーサー190個の観測データの詳細を調査。さまざまな色や波長で得られた観測結果を組み合わせることで各クエーサーの「刻んだ印(ticking)」を標準化し、「クエーサー時計」ともいうべきものを作り上げました。
「クエーサー時計」のデータに基づくと、ビッグバン直後から約10億年後までの初期宇宙の時間の流れは今日よりもはるかに遅いものだったとのこと。
過去に天文学者は超新星を「標準時計」として利用することで、時間の流れが遅かった初期宇宙が、宇宙の年齢の約半分までさかのぼるものであると推測しましたが、今回の研究結果はそれよりも踏み込んだ内容です。
ルイス教授は「超新星は、単一の閃光のように振る舞い、研究を容易にしますが、クエーサーは開催中の花火大会のように複雑です。私たちはこの花火大会を解明して、クエーサーも初期宇宙の標準的時間指標として使用できることを示しました」と述べました。
また、遠方のクエーサーの時間の遅れを特定することができなかった先行研究をふまえて、ルイス教授は「先行研究により人々はクエーサーが本当に宇宙論的な物体なのか、宇宙が膨張するという考えは正しいのかと疑問を抱くようになりました。しかし、今回のデータと分析により、私たちはクエーサーの捉えどころのない『刻んだ印』を見つけ、クエーサーはアインシュタインが一般相対性理論で予測したように働くことがわかりました」と述べています。
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