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AIでコードを再構築することが容易になったことで「コードをコピーしたらライセンスを引き継ぐ」というルールが破壊されているという指摘


オープンソースソフトウェアの世界ではライセンスによってソースコードの再利用や改変の条件が定められていますが、AIによってオープンソースコードを元にした再実装が容易になり、ライセンスの義務を回避できてしまう可能性があります。こうした問題について、オープンソース開発者のホン・ミンヒ氏が「合法であることと正当であることは同じなのか?」と題して、AIがオープンソースの理念をどのように揺るがしているのかを解説しています。

Is legal the same as legitimate: AI reimplementation and the erosion of copyleft — Hong Minhee on Things
https://writings.hongminhee.org/2026/03/legal-vs-legitimate/index.en.html


2026年3月初め頃、テキストの文字コードを判定するPythonライブラリ「chardet」が新しいバージョンを公開しました。新しいバージョンでは貢献者としてAnthropicのAI「Claude」が記載されているほか、ライセンスはこれまでのLGPLライセンスからMITライセンスへ変更されました。


LGPLライセンスはライブラリを改変して公開する場合にはソース公開が必要で、改変版も同じLGPLで公開する必要があります。しかし、chardetのメンテナーであるダン・ブランチャード氏によると、今回の実装では既存のソースコードを直接参照せず、ライブラリのAPI仕様とテストコードだけをAIに与えてライブラリをゼロから再実装させたとのこと。ブランチャード氏は「これは独立した新しい作品であり、LGPLを引き継ぐ義務はない」と結論づけました。このように既存コードを参照せず、仕様やテストだけを基にソフトウェアを再実装する手法は「クリーンルーム設計」と呼ばれます。chardetがMITライセンスになったことで、改変してもソース公開義務はなく、従来のライセンスと関係なく自由に使えるようになっています。

しかし、chardetの原作者であるマーク・ピルグリム氏はGitHubのイシューでブランチャード氏に反論しました。ピルグリム氏は「ライセンスされたコードは改変された場合、同じLGPLライセンスの下でリリースされなければなりません。彼らは元のライセンスのコードを十分に理解しており、仮に高度なコードジェネレーターでゼロから作ったと主張したとしても、追加の権利を得られるわけではありません。これはLGPLの明確な違反です」と主張しています。


この件についてさまざまな議論が交わされています。Python用フレームワーク「Flask」の作者であるアルミン・ロナッハー氏は、「AIとテセウスの船」というブログを投稿し、AIによってコード生成コストが下がった時代におけるライセンスの問題について問いかけました。オープンソースのインメモリデータベース「Redis」を開発したサルヴァトーレ・サンフィリッポ氏は著作権法の観点から「著作権が守るのはコードの表現であって、アイデアではない」と述べた上で、「ソフトウェアは常に過去のアイデアの上に積み重なって発展してきたものであり、AIによる再実装もその延長にすぎず、コードを直接コピーしていない限り正当な行為です」と指摘しました。

オープンソースライセンスとコード再実装の問題について、ロナッハー氏とサンフィリッポ氏の意見では、大枠では法的に問題がないことを理由にブランチャード氏によるコードの再実装とライセンスの変更を擁護しています。しかしミンヒ氏は両者の論理を否定した上で、「『合法』と『正当』を区別する必要がある」と語っています。


chardetは約12年間にわたり多くの開発者の貢献によって積み重ねられてきたライブラリであり、「その恩恵を受けるなら、あなたが作って公開する場合にも同じ条件(ライセンス)で共有せよ」ということをLGPLライセンスは定めています。このような二次的著作物にも公開を義務付ける仕組みはコピーレフトと呼ばれます。

AIによってコードの再実装が容易になり、ライブラリを直接参照しなくてもほとんどコピーすることが可能になったことで、コピーレフトの概念が侵食されつつあります。しかし、コードの再構築が法的に何ら問題ないとしてもコミュニティ的に正当であるとは意味しないとミンヒ氏は指摘。同様に、フリーソフトウェア財団の代表を務めるゾーイ・コーイマン氏は「自分が受け取った権利を他者に与えることを拒むことは、どんな方法によるものであれ反社会的な行為です」と述べています。

ミンヒ氏によると、コードの再構築が容易になった世界では、コピーレフトが不要になるというよりむしろコピーレフトがより重要になると考えられるそうです。コピーレフトの概念はコミュニティの価値観と一致するため選択されたものであり、法理的に正しいから選ばれたものではありません。AIの急速な発展により急激に社会情勢が変わる中で、「コミュニティから受け取ったものはコミュニティに返すべき」という社会的正当性を重視するべきだとミンヒ氏は結論付けています。

ソーシャルニュースサイトのHacker Newsでも、コピーレフトを侵食するAIの再実装について議論が交わされています。中には、「AIが知的財産の概念そのものを解体してしまうのではないか」という懸念の声も上がっています。

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in AI,   ソフトウェア, Posted by log1e_dh

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