新型コロナのパンデミックにより「近視の子ども」が急速に増加
新型コロナウイルスのパンデミックにより世界中の人々の生活習慣が変化しており、それに伴い運動量が減ったりアルコール摂取量が増えたりと、さまざまな影響が報告されています。パンデミックにより若者の精神状態が改善したという報告もありますが、新しい研究調査では子どもの視力が低下していると指摘されています。
Myopia incidence and lifestyle changes among school children during the COVID-19 pandemic: a population-based prospective study | British Journal of Ophthalmology
https://bjo.bmj.com/content/early/2021/07/15/bjophthalmol-2021-319307
The Global Pandemic Could Be Causing More Shortsightedness in Kids Than Ever Before
https://www.sciencealert.com/the-global-pandemic-might-be-weakening-the-eyes-of-children
香港の研究者グループは、2020年に6~8歳の子ども709人を対象として視力検査を実施し、翌年にも同じ被験者に視力検査を実施しました。すると、近視の発症率が新型コロナウイルスのパンデミック以前と比べて、大幅に増加していることが明らかになっています。
視力の低下が新型コロナウイルスのパンデミックに直接関係しているかどうかをデータから判断することは不可能ですが、屋外で過ごすことは子どもが近視を発症するリスクを低下させることが知られています。一方で、スマートフォンの操作やテレビゲームで遊ぶといった「画面を見続ける作業」は視力を低下させる傾向にあります。
2018年には「屋外で遊ぶこと」が子どもが近視を発症するリスクを低下させる、という研究調査が発表されています。そのため、新型コロナウイルスのパンデミックにより学校が休校となり子どもたちが屋外で遊ぶ機会が減ったことが、子どもたちの視力低下を引き起こしているとも十分に考えられます。
研究調査を発表した香港の研究者グループは、「新型コロナウイルスのパンデミックに対する家庭での隔離および学校の休校が永遠に続くわけではありません。しかし、デジタル端末の利用率の上昇や依存、長期間自宅に軟禁状態となっていることによる行動の変化は、特に子どもたちに『近視の進行を早める』という長期的な影響を与える可能性があります」と記しています。
中国では毎年何十万人もの学生が視力検査を受けていますが、それらのデータを分析すると若者の90%以上が近視であることが明らかになっています。また、香港でも大規模な視力検査が行われており、このデータも中国本土で収集された調査データと同じく、子どもたちの近視の発症率の上昇を明らかにしているとのこと。
2021年1月に発表されたデータでも、中国の6歳以下の子どもたちの近視の発症率が、2020年の新型コロナウイルスパンデミック以前と比べて3倍も高くなっていることが明らかになっています。そのため、同データを公表した研究者グループは「今回のような異常に高い近視の発症率は他の年には見られないため、おそらく2020年におきた外出禁止期間が引き起こした異常事態が原因である可能性が高い」と記しています。
また、今回新たに研究調査を発表した研究者グループも「新型コロナウイルスのパンデミックが起きる以前の調査では近視の発症率が1年で13.15%であったのに対して、新型コロナウイルスのパンデミック以降はわずか8カ月で19.44%の発症率を記録しています。つまり、新型コロナウイルスのパンデミック期間に近視の発症率が増加したことは明らかです」と記しており、パンデミックが子どもたちの視力に影響をおよぼした可能性が高いと指摘しています。
子どもたちのどういった生活習慣が近視の発症率に影響したかは不明ですが、アンケート調査から被験者の子どもたちはパンデミックにより屋外で過ごす時間が68%減少しており、屋外で遊ぶ1日の平均時間はわずか「24分」となっていることも明らかになっています。一方で、テレビ画面やスマートフォンの画面など「ディスプレイを見つめる時間」はパンデミック以前と比べて3倍近く増加しており、1日平均が2時間半から7時間にまで増加しています。
なお、研究者グループは「スクリーンを眺める時間と近視の進行との間に明確な関連性はみられなかった」とも説明しており、ディスプレイを眺める時間が長くなったことが視力低下に直接影響したか否かは不明です。
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