GoogleやFacebookの社屋は海面上昇で洪水リスクが高いのに対策が不十分だという指摘、その対応状況とは?
GoogleやFacebookの社屋は、サンフランシスコ湾の沿岸部に建設されています。この地域では近年の海面上昇によって洪水のリスクが高まっていますが、「堤防建設のためにGoogleやFacebookが投入している金額が少なすぎる」という現状をナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)が報告しています。
Rising Seas Are Coming For Big Tech Campuses. Who Will Pay To Protect Them? : NPR
https://apps.npr.org/sea-level-rise-silicon-valley/
サンフランシスコ湾の沿岸部には、Google(黄色)やFacebook(青)の社屋が多く立ち並んでいます。
記事作成時点でもGoogleやFacebookによる社屋の拡大は進んでおり、Googleはサニーベール(Sunnyvale)に過去5年間で合計30億ドル(約3300億円)相当の物件を購入しました。
Facebookはサンフランシスコ湾の北部に過去10年間で合計25億ドル(約2700億ドル)相当の物件を購入しました。このFacebookの社屋は、ベルヘブン(Belle Haven)やイーストパロアルト(East Palo Alto)といったシリコンバレーの中でも低所得な人々が暮らす地域に囲まれています。
以下の画像は、サンフランシスコ湾の海面が4.9フィート(約150cm)上昇し、大雨が発生した場合の洪水リスクが高い地域を表しており、Facebookの社屋や周辺地域の洪水リスクの高さが読み取れます。
同様に、4.9フィートの海面上昇が起こると、Googleの社屋も洪水のリスクにさらされると予測されています。NPRは「4.9フィートの海面上昇は21世紀中に起こりうることです」と述べ、サンフランシスコ湾周辺地域の洪水リスク上昇に対して危機感を示しています。
この洪水リスクの増大に対処するべく、サンフランシスコ湾周辺地域の自治体は大規模な堤防建設プロジェクトを計画しています。この堤防建設には数十億ドル(数千億円)の費用が必要ですが、NPRサンフランシスコ湾周辺の自治体が数十億ドルを支払うのは困難だと指摘し、「堤防建設にかかる費用を誰が支払うかが大きな問題です」と語っています。
Facebookの社屋が位置するメンロパークには、高さ9フィート(約274cm)の堤防が存在します。しかし、洪水対策機関・San Francisquito Creek Joint Powers Authority(SFCJPA)でプロジェクトマネージャーを務めるケビン・マーレイ氏は「一部の人々はそれらを堤防と呼んでいますが、実際には単なる土の山にすぎません」と述べ、現状の堤防では洪水を防ぐとは困難であると指摘しています。
Facebookの広報担当者は、NPRに対して「海面上昇は、サンフランシスコで働くすべての人にとっての問題です」「私たちは、社屋周辺のコミュニティを保護するための役割を果たしたいと考えています」と述べたとのこと。しかしNPRは「イーストパロアウトは洪水リスクに対応するために年間予算の13%に及ぶ550万ドル(約6億円)を投じています。これに対してFacebookは780万ドル(約8億6000万円)の資金を投じていますが、この金額はFacebookの2020年の収益のわずか0.009%です」と述べ、Facebookが洪水対策に投じている資金が少なすぎると主張しています。
Googleの社屋周辺でも、約20億ドル(約2200億円)の費用が必要となる堤防建設計画が進んでいますが、この計画も資金不足に直面してます。サンフランシスコ湾の堤防を管理しているSanta Clara Valley Waterの取締役を務めるリチャード・サントス氏は「Googleはサンフランシスコ湾周辺に社屋を建設するメリットを享受していますが、堤防建設プロジェクトへ資金を提供していません」と述べ、Googleも堤防建設プロジェクトに資金提供するべきだと主張しています。
専門家の間ではサンフランシスコ湾の洪水対策が完了するまでは新たな開発を行うべきではないという意見が存在しています。しかし、カリフォルニア大学デービス校で環境学を研究するマーク・ルーベル教授は、GoogleやFacebookによる社屋の拡張が新たな雇用や税収をもたらすため、自治体が開発を拒否する可能性は低いと指摘しています。また、デラウェア大学で災害対策について研究するA.R. Siders氏は「サンフランシスコ湾沿岸部の開発を進めることは、将来の大きなコストにつながるとを私たちは理解しています。しかし、私たちは短期的な利益に非常に誘惑されやすいです」と述べ、自治体が開発による利益に惑わされて洪水リスクの問題を先延ばししている現状に警鐘を鳴らしています。
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