頭の中で人や物を思い浮かべられない「アファンタジア」の研究が想像力に関する理論に影響を与えている

アファンタジアとは心の中で人や物といったイメージを視覚化できない状態のことであり、人口の約2~5%はアファンタジアであるといわれています。そんなアファンタジアに関する研究により、人間の想像力に関する理論がさらに進んでいるとのことです。
Congenital aphantasia: what we (think we) know, what we thought we knew but were mistaken about, and what we don't know - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1053810026001285
People Who Can't Picture Anything Are Rewriting the Science of Imagination - Daily Neuron
https://dailyneuron.com/aphantasia-mental-imagery-brain-network/
「心の中で視覚的なイメージを思い浮かべることができない」と聞くと不思議に思う人が多いはずですが、中には「他の人もそうだと思っていた」と驚いた人もいるかもしれません。アファンタジアがどのような状態なのかは、以下の記事を読むとよくわかります。
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アファンタジアに関する現代の研究は、2010年に「後天的に視覚化能力を失った男性の事例」が報告されたことがきっかけでした。この報告の後、「自分はそもそも最初から脳内でイメージを視覚化できない」という読者が現れ、アファンタジアに関する研究が本格化したとのこと。研究者の中には、自分自身がアファンタジアを持つという人もいます。
その後の研究では、アファンタジアを持つ人のうち約4分の1が、視覚だけでなく聴覚・味覚・嗅覚・触覚といった想像上の感覚もまったくないことが報告されています。こうした影響は身体的な反応にも現れ、アファンタジアの人々は「ホラーな物語の文章」を読んでも、通常の人とは異なり皮膚に流れる電流レベルが変化しないことがわかっています。一方、「恐怖を感じさせる写真」を見ると皮膚の電流レベルが上昇するため、恐怖という感情がないわけではありません。
怪談で恐怖を感じることがない「アファンタジア」と呼ばれる人々の新たな調査結果 - GIGAZINE

こうしたアファンタジアの人々に関する研究は、人間の想像力に関する理論にも影響を及ぼしています。通常、人がコップを見ると目から入った信号が脳の一番後ろにある一次視覚野に届きます。認知神経科学者のジョエル・ピアソン氏は2019年に、「脳内でコップを想像する人ではこの経路が逆に働く」というモデルを提唱しました。つまり、前頭部の計画領域が「コップを想像しろ」と要求し、記憶領域がコップの詳細な情報を提供し、実際に物を見るのと同じ一次視覚野にコップのイメージが投影されるという流れです。
しかし、「一時視覚野に広範な損傷を受けたにもかかわらず、脳内でイメージを視覚化する能力は保たれている患者」の症例報告が複数存在しており、この理論には反例があります。また、頭皮に微弱な電流を流して一時視覚野の活動を抑制したところ、被験者はより鮮明なイメージを思い浮かべることができたという研究結果も報告されています。
数十件にわたる脳画像研究を統合した論文では、人々がイメージを想像する際には脳の前部と左側頭葉の下部にある紡錘状回という領域が活性化されることが確認されました。ある症例では、建築家の男性が脳卒中を起こしてこれらの領域が使えなくなった後、想像力を失ってしまったと報告されています。
自らもアファンタジアだというクイーンズランド大学心理学部教授のデレク・アーノルド氏らは、新たに学術誌のConsciousness and Cognitionに掲載されたレビュー論文で、「前頭前野や紡錘状回、そして運動計画に関与する頭頂部付近の領域における協調的な活動により、心の中の視覚的イメージが生じる」という創発的なフレームワークを提案しています。
イメージを想像する際には脳の複数領域が強調しているという創発的なフレームワークに基づけば、アファンタジアの程度や状態に差がある理由について、「ネットワークのどこで機能不全が起きたのか」に左右されていると考えられます。これが、アファンタジアの人でも「視覚的イメージだけが欠けている人」「視覚だけでなく聴覚や味覚のイメージも欠けている人」「夢の中では画像が見える人」などがいる理由かもしれません。

また、創発的なフレームワークに基づいた想像力の理論は、アファンタジア以外の人に当てはまる可能性もあります。つまり、創発的フレームワークにおけるネットワークの違いが、脳内で画像を思い浮かべられる人の中でも「頭の中では主に画像や動画で考える人」「主に頭の中の声で考える人」「嗅覚や動きで考える人」などのバリエーションを生み出している可能性があるわけです。
神経科学系メディアのDaily Neuronは、「アファンタジアとは、突き詰めればある種の意識体験の欠如であり、脳がどのようにしてそのような体験を生み出すのかを研究する貴重な機会となります」と述べました。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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