中国政府が隠ぺいするウイグル強制収容所を衛星写真から発見する手法とは?
中国政府は新疆ウイグル自治区に強制収容所を建設し、ウイグル族に対する洗脳や拷問を行っていることが知られています。そんな中国の強制収容所の所在地を衛星画像を基に明らかにした功績で2021年のピューリッツァー賞を受賞したアリソン・キリング氏が、強制収容所を探し出した手法を語っています。
Architect Alison Killing Wins a Pulitzer for Uncovering Forced Labor Camps in China | 2021-06-28 | Architectural Record
https://www.architecturalrecord.com/articles/15203-architect-alison-killing-wins-a-pulitzer-for-uncovering-forced-labor-camps-in-china
以下の画像は、中国の大手検索エンジン・百度(Baidu)が提供する地図サービスで新疆ウイグル自治区の一部を表示したものです。地図を見ると、白く塗りつぶされて地形を確認できない部分があることが分かります。
以下の地図は、上記の地図と同じ地点をGoogle Mapで表示したものです。Baiduの地図で白塗りされていた部分を確認すると、複数の建物が並んでいることが分かります。
キリング氏によると、中国当局は、軍事施設や発電所などの戦略的価値がある施設を地図から除外するようにBaiduに求めているとのこと。同様に、強制収容所の位置もBaiduの地図から消されています。そこで、キリング氏はBaiduの地図で削除された地点の衛星画像を他の地図サービスで確認することで、強制収容所の位置や数を明らかにしようと試みました。
キリング氏が率いるプロジェクトチームがBaiduから削除された新疆ウイグル自治区内内の地点リストを作成したところ、削除された地点の数は約500万地点に及んだとのこと。キリング氏は500万地点から強制収容所に必要な「水道」「電気」「道路」を含む約5万地点を選び出し、1つ1つの衛星画像を確認しながら強制収容所と考えられる地点を絞り込みました。
建築士の資格を持つキリング氏は、建築士として培った「施設の外観から用途を推測能力」や「2次元の画像を3次元に落とし込む能力」を存分に発揮して強制収容所の探索に取り組んだとのこと。その結果、キリング氏は2020年8月までに268カ所の強制収容所を発見し、記事作成時点までに新たに100カ所以上の強制収容所を発見することに成功しています。
キリング氏は発見した強制収容所の位置や数について報告する記事を公開しました。この記事は「衛星画像と建築に関する専門知識に基づく説得力のある記事」として高く評価され、優れた報道に送られるピューリッツァー賞を受賞しました。
Megha Rajagopalan, Alison Killing and Christo Buschek of BuzzFeed News - The Pulitzer Prizes
https://www.pulitzer.org/finalists/megha-rajagopalan-alison-killing-and-christo-buschek-buzzfeed-news
キリング氏は、「今回の収容所探索プロジェクトは、私のような特定のスキルを持った人物が報道に参加することで、他では起こり得ない興味深い調査を生み出せることを示しました」「私たちのプロジェクトは、まだ初期段階にあります。今後、さらに収容所に関する情報の調査を進めるつもりです」と語っています。
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