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Appleのプライバシー機能をバイパスしようとした中国企業の顛末とは?


AppleはiOS 14.5以降でプライバシー機能を強化し、企業によるiOSユーザーの行動追跡を制限しています。これを受けて中国の広告企業がAppleのプライバシー機能をバイパスし、iOSユーザーが追跡を拒否していても、追跡を可能にする仕組みを開発していました。2021年3月に明らかになったこの「CAID」というプロジェクトの顛末を、Financial Timesが報じています。

Apple wins privacy battle in China
https://www.ft.com/content/c79a5f6a-0827-47a4-9b3b-622a81fcc75a

Attempts to Circumvent Apple's App Tracking Transparency Rules in China Reportedly Fail to Gain Traction - MacRumors
https://www.macrumors.com/2021/07/05/china-iphone-ad-tracking-efforts-fail/

AppleはiOSにおけるプライバシー強化のため、iOS 14.5から新たにApp Tracking Transparency(ATT)というフレームワークを導入しています。ATTは「広告表示のための企業によるユーザー追跡」を制限するもので、ユーザーがアプリを使用する前に「広告追跡の許可」を求めます。ユーザーが追跡を拒否すると企業はユーザーの興味・関心を把握できなくなるため、効果的な広告を表示できなくなると危惧されたことから、中国企業の中にはATTをバイパスする技術を開発するところもありました。

中国企業がAppleのユーザー追跡ルールをバイパスする方法を開発中、「Appleは開発を知りつつも目をつむっている」という指摘も - GIGAZINE


中国の広告企業によって開発された技術は「CAID」と呼ばれるもので、ユーザーが広告追跡を許可していなくとも、独自の広告識別子を利用して追跡可能にします。CAIDは中国政府の支援を受けるChina Advertising Association(中国広告協会/CAA)の支援を受けており、動画共有サービス「TikTok」を運営するByteDanceやWeChatの開発元であるTencentによってテスト中だと報じられていました。

またCAIDの開発側は、AppleがCAIDの開発を認識しているとも説明したことから、「Appleは開発を知りつつも目をつむっている」とも指摘されていましたが、後にAppleは中国の開発者2人に警告を行ったと発表。実際に、CAIDを実装した中国アプリの更新をブロックしました。


そして、7月5日にFinancial Timesは、Appleの対応によりCAIDが存続困難になっていることを報じています。香港で働く関係者は、Appleの課した制限によりプロジェクトはけん引力を失ったと話しているとのこと。この動きに対し、中国アプリの情報サイト「AppInChina」のCEOであるRich Bishop氏は「Appleおよび消費者プライバシーの勝利です。中国の大手テクノロジー企業は後退し、Appleのルールに準ずることを余儀なくされました」とコメント。またアドテク企業「Branch」のAlex Bauer氏は「『Appleには市場の主要アプリ全てを禁ずる余裕はない』という仮定のもと、中国アプリのエコシステムはCAIDに賭けていました」と述べています。

なお、Financial Timesのコメント要請にByteDanceやTencentは応じていません。一方でAppleは「App Storeの利用規約とガイドラインは世界中の全ての開発者に等しく適用されます」「ユーザーの選択を無視するアプリはApp Storeから削除されます」と述べました。

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in モバイル,   ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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