国防省職員がバス停に置き忘れてしまった機密文書を一般市民が発見
イギリス国防省の職員が紛失した「50ページにわたる機密文書」が、2021年6月22日(火)に一般市民によってバス停で発見されていたことが判明しました。この機密文書には、現地時間の2021年6月23日(水)に発生した「クリミア半島沖におけるイギリス駆逐艦とロシア軍の応酬」について、事前にロシア軍側の反応を想定した内容も記されていたとのことです。
Report: Classified UK defense papers found at bus stop
https://apnews.com/article/europe-government-and-politics-14e899a86d27a0e27f79564bf23662f0
UK defense documents 'found at bus stop' - CNN
https://edition.cnn.com/2021/06/27/uk/uk-defense-documents-lost-gbr-intl/index.html
Classified Ministry of Defence papers found at bus stop in Kent | Ministry of Defence | The Guardian
https://www.theguardian.com/uk-news/2021/jun/27/classified-ministry-defence-papers-found-bus-stop-kent
6月22日の早朝、ある一般市民がイングランドのケント州にあるバス停で、「水でぬれた書類の山」を発見しました。書類は50ページにわたる国防省の機密文書だったそうで、電子メールやパワーポイントのプレゼンテーションを含んでいたと、発見者から連絡を受けたBBCは報じています。また、機密文書では「クリミア半島沖を通航するイギリス駆逐艦・HMSディフェンダーに対し、ロシア軍がどのように反応する可能性があるか」という想定が論じられていたとのこと。
実際に、機密文書が発見された翌日の6月23日には、ウクライナ軍との合同訓練を終えた後にクリミア半島沖を通航したHMSディフェンダーに対し、ロシア軍が警告射撃を行ったと発表する事態が発生しました。ロシア側は、HMSディフェンダーが領海を侵犯したために警告射撃を行ったと主張していますが、イギリス側は国際法に従ってウクライナの領海を航行しており、警告射撃も受けていないと主張しています。
HMSディフェンダーに乗船していたBBCのクルーが撮影した様子は、以下のムービーを見るとよくわかります。
“針路変えねば撃つ”クリミア沖 英VSロ 緊迫の英艦内映像 - YouTube
「皆 直ちに席に着け」という指示が飛び、緊迫する船内。
砲弾の装塡(そうてん)も行われています。
離れた場所にロシアの軍艦が見えるほか……
海上警備艇も接近してきます。
クリミアを併合したという立場のロシアにとって、クリミア半島沖は領海という認識ですが、ロシアによるクリミア自治共和国の併合を認めていないイギリスにとって、この海はウクライナの領海という認識です。
ロシア側は「針路を変えなければ射撃する」という警告を発してきました。
ロシア国防省は、「駆逐艦が領海に侵入したため警告射撃を行ったほか、爆撃機が爆弾4個を周辺に投下した」と発表しましたが……
イギリス国防省は「駆逐艦に向けた射撃はなく爆弾が投下されたとの認識もない」と主張しています。
発見された機密文書によると、イギリス国防省はクリミア半島沖を通るルートの選択について、「イギリスがウクライナの領海だと認識している場所で、ウクライナ政府と関わりを持つ機会を提供する」と指摘していたとのこと。また、「安全でプロフェッショナルな方法」から「安全でもプロフェッショナルでもない方法」まで、3パターンのロシア側の潜在的な対応を想定していたことも報じられています。
また、今回発見された機密文書にはロシア軍のシミュレーションのほかに、「アフガニスタンにおける北大西洋条約機構(NATO)の同盟軍が撤退した後、イギリス軍が引き続きアフガニスタンに残る可能性」についての議論も含まれていたとのこと。アフガニスタンでは、2021年4月末にアメリカの駐留軍が正式な撤退を始めており、NATOのアメリカ同盟国も駐留軍の引き上げを開始し、数カ月以内に撤退を完了する予定だとしています。
BBCが6月27日(日)に「バス停で国防省の機密文書が発見された」と報じた後、国防省は機密文書紛失問題についての声明を発表。「国防省は先週、機密性の高い国防書類が一般市民によって回収された事件について通知されました。部門は情報セキュリティを非常に真剣に受け止めており、調査が開始されました。関係する職員は、文書を紛失した時点で問題を報告しました」と述べました。
野党の政策立案機関・影の内閣で国防長官を務める労働党のJohn Healey氏は、機密性の高い文書がどのように持ち出され、どのようにバス停に置き去られたのかを国防省が即座に確認することが重要だと指摘。「国家安全保障の重要な分野を幅広くカバーする機密文書の喪失は、大臣にとって懸念されると同時に恥ずべきことです」「大臣は最終的に、国家安全保障が損なわれていないこと、軍事または安全保障に悪影響が及んでいないこと、このような事態が2度と起こらないように保証する適切な手続きが整っていることを、国民に示さなければなりません」と主張しました。
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