フェイクニュースサイトの広告トラフィックの半分はGoogleからのものだという研究結果
アメリカ・ミシガン大学の研究者が実施した調査により、フェイクニュースサイトや低品質なコンテンツを扱うサイトの多くがGoogleをはじめとする著名な広告会社に依存していることが分かりました。このことから研究者らは、主要な広告会社がフェイクニュースサイトへの広告提供を停止することで、フェイクニュースサイトを減らしたり、フェイクニュースの識別を容易にしたりすることができると述べています。
Market Forces: Quantifying the Role of Top Credible Ad Servers in the Fake News Ecosystem
https://ojs.aaai.org/index.php/ICWSM/article/view/18043/17846
Google Serves Half Of Ad Traffic For Fake News Websites, Finds Study
https://www.boomlive.in/explainers/google-serves-half-of-ad-traffic-for-fake-news-websites-finds-study-13541
ミシガン大学で情報学を研究しているリア・ボザース氏とセレン・ブーダック氏は、フェイクニュースサイトの広告収入の実態を調べるため、フェイクニュースを題材にした先行研究やファクトチェックサイトなどから「誤解を与えやすいニュースサイト」のリストを取得し、そこから閉鎖済みのサイトを除外しました。ボザース氏らは次に、広告ブロックソフトウェア用のフィルターであるEasylistなどを利用して、フェイクニュースサイトに配信されている広告の提供元を割り出し、どのサイトがどの広告会社から広告の提供を受けているかを調べました。
こうして得られた「低品質なニュースサイト」や「フェイクニュースサイト」と広告会社の関係性を分析し、信頼できる「伝統的なニュースサイト」の分析結果と比較したところ、フェイクニュースサイトはほかのニュースサイトに比べて、使用している広告サーバー数が著しく少なく、またそもそも広告を掲載していない割合も高いことが分かりました。具体的には、伝統的なニュースサイトに広告が掲載されていない割合が22.9%だったのに対し、フェイクニュースサイトは29.6%、低品質なニュースサイトは32.8%だったとのことです。
この結果について、研究者らは「一見すると『フェイクニュースサイトは積極的に利益を追求している』というこれまでの見解と矛盾していますが、これは『閲覧者が少ないロングテールなコンテンツの提供者は、収益化するにはトラフィックが少なすぎるため、広告を表示する可能性が低い』というこれまでの研究結果で説明することが可能です」と述べています。
研究チームが指摘したとおり、広告なしのフェイクニュースサイトの全体的なトラフィックは、広告有りのフェイクニュースサイトのトラフィックの7.5%と著しく少ないものでした。これは、低品質なニュースサイトでも同様でした。この調査結果から研究者らは「フェイクニュースサイトは、伝統的なニュースサイトと比べると、特定の広告サーバーへの依存度が高いことが示唆されました」と結論付けています。
研究チームが次に、フェイクニュースサイトなどに広告を流している広告会社の内訳を調べたところ、フェイクニュースサイトのあらゆる広告トラフィックのうち、約半分にあたる48%がGoogleから提供されたものだということが判明。フェイクニュースサイトの広告トラフィックの66.7%と、低品質なサイトの広告トラフィックの55.6%が、GoogleのDoubleClickをはじめとする「信頼性が高いとされる広告会社の上位10社」によって提供されているという結果となりました。
そこで、ボザース氏らがフェイクニュースサイトのトラフィック数や、広告会社の財務資料などを分析した結果、広告会社がこうしたニュースサイトから得る広告収入は、伝統的なニュースサイトからの収入に比べてごくわずかだということが確認されました。
こうした調査結果からボザース氏らは「大手の広告会社は、フェイクニュースサイトからほとんど利益を得ていないので、ブラックリストを用いてフェイクニュースサイトへの広告配信をブロックしても影響は受けません。そうなれば、フェイクニュースサイトが大手以外の広告会社に切り替えることが考えられますが、信用の低い会社が配信している怪しげな広告でサイトが埋め尽くされれば、閲覧者がフェイクニュースを見分けるのが簡単になるでしょう」と述べました。
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