サイエンス

新型コロナに感染した人でもワクチンを接種すべきなのか?


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンは、接種者の体内で抗体を作り出すことを目的としています。一方で、一般的に、ウイルスに感染することでも体内では抗体が作られます。そこで「過去にCOVID-19に感染した人でもワクチン接種の効果があるのか?」という疑問を元にした調査結果が公開されました。

Necessity of COVID-19 vaccination in previously infected individuals | medRxiv
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.06.01.21258176v2

Cleveland Clinic Statement on Previous COVID-19 Infection Research – Cleveland Clinic Newsroom
https://newsroom.clevelandclinic.org/2021/06/09/cleveland-clinic-statement-on-previous-covid-19-infection-research/

この調査結果はアメリカ、オハイオ州にあるクリーブランド・クリニックが発表したもの。クリーブランド・クリニックでは2020年12月16日にCOVID-19のワクチン接種が始まりました。ワクチン接種の対象者の中には、ワクチン接種前にPCR検査で陽性を示した人も含まれていたとのこと。そこで研究チームは、「少なくとも42日前にPCR検査で陽性を示した人」を「過去にCOVID-19に感染したことがある人」と定義し、またワクチン接種完了の定義を「2回目の接種から14日経過した人」として、過去の感染者に対するワクチンの効果を観察しました。

調査の対象となった従業員は合計5万2238人。調査では、過去に感染経験がある2579人のうち53%にあたる1359人はワクチン接種が完了しておらず、一方で過去に感染したことがない4万9659人のうち41%にあたる2万2777人もワクチン接種が完了してない状態が条件として作られました。各グループを比較した結果、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の累積発生率は、「過去に感染経験のないワクチン接種者」「過去に感染経験を持つワクチン接種者」「過去に感染経験を持つワクチン未接種者」いずれのグループにおいても、「感染経験を持たずワクチンも未接種」のグループと比較してほぼゼロだったとのこと。また「過去に感染経験を持つワクチン未接種者」のうち、調査期間にCOVID-19に感染した人は1人もいませんでした。


論文はまだ査読が行われていないという点に注意が必要です。また、今回の研究結果は「過去に感染した人はワクチンを接種しなくてもよい」という意味ではなく、研究は限定的なものであり、過去に感染した人であってもワクチン接種はすべきだと研究チームは促しています。

一方で、ワクチンには数の制限があり、世界全体に接種を行き渡らせるためには「順序」が必要になります。この研究結果が示されることで「過去に感染した人よりも、感染したことがない人を優先させることができる」と研究チームは述べました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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