ランサムウェア攻撃は大企業の脅威だけでなく食料や医療など「人々の日常生活」に矛先を向け始めたとの報道
ランサムウェア攻撃が近年増加の一途をたどっており、2021年5月にはアメリカ最大の石油パイプラインが停止したり、同年6月には世界最大の食肉加工業の所有する全アメリカ工場が操業停止したりしています。こうしたランサムウェア攻撃の被害について、アメリカ大手紙のThe Washington Postが「最悪の事態が発生する可能性がある」という専門家の意見を報じています。
How ransomware is impacting regular people - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2021/07/08/ransomware-human-impact/
Ransomware Is Increasingly Impacting Day-to-Day Life — Pixel Envy
https://pxlnv.com/linklog/day-to-day-ransomware/
ランサムウェア攻撃は、マルウェアによってシステムへのアクセスを強制的に制限して身代金を要求するというサイバー攻撃の一種です。これまでランサムウェア攻撃はカプコンから最大35万人の個人情報が流出した事件やAcerが約50億円を請求された事件など、主に大企業の所有する個人情報や機密情報などを標的にしていました。
カプコンが不正アクセス攻撃を受け最大35万件の個人情報が漏洩した可能性、今後発表予定のゲームタイトルに関する情報なども漏洩か - GIGAZINE
しかし、近年ではランサムウェア攻撃の影響が人々の身近な生活にまで及ぶようになったと、The Washington Postは指摘しています。2021年5月に発生した、アメリカ最大の石油パイプライン運営会社Colonial Pipelineへのランサムウェア攻撃では、アメリカ東海岸の燃料供給の45%をまかなっていた同社の操業が停止したことで、ガソリン不足への懸念してガソリンスタンドに長蛇の列ができたり、中には「ビニール袋」でガソリンを保管しようとする人まで現れました。そのため、最後にはアメリカの消費者製品安全委員会が「ビニール袋でガソリンを保管するのはやめてください」という公式警告を出したりする事態にまで発展しました。
アメリカ最大の石油パイプラインがランサムウェア攻撃で停止、バイデン政権は緊急事態を宣言 - GIGAZINE
さらに、JBSの事件においては同社がアメリカにおける食肉供給の20%を占めるというフードサプライチェーンの要ともいえる存在だったことから、アメリカの食肉業界に大きな混乱が発生したと報じられました。
世界最大の食肉業者JBSがランサムウェア攻撃を受けアメリカの全牛肉工場が操業停止、復旧の見通しが立つも影響は甚大 - GIGAZINE
The Washington Postは、Colonial PipelineやJBSの事件以外にもランサムウェア攻撃によってマサチューセッツ島とマーサズ・ヴィニヤード島の間を運航するフェリーが遅延したり、Hollywood Presbyterian Medicalが1カ月近くも医療データにアクセスできずに化学療法患者に対する治療の遅れが出たりしたことを挙げつつ、「実際には報じられている20倍から30倍もの数の事件が発生している」という専門家の意見を報道。世に知られているよりもはるかにランサムウェア攻撃が多発していると報じています。
一方、この報道についてブロガーのニック・ヒーア氏は「ランサムウェア攻撃は暗号資産という取引当事者の特定を困難にする技術によって成り立っている」と言及。犯罪者が犯罪行為に暗号資産を役立てている現状を非難しています。
ロイター通信の報道によると、こうしたランサムウェア攻撃による大規模事件が続発したことを受け、アメリカ司法省はランサムウェア攻撃への対応の優先度をテロと同等にまで引き上げているとのことです。
アメリカがランサムウェア攻撃への対応の優先度をテロと同等にまで引き上げる - GIGAZINE
by jlhervàs
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