セキュリティ

世界最大の食肉業者JBSがランサムウェア攻撃を受けアメリカの全牛肉工場が操業停止、復旧の見通しが立つも影響は甚大


ブラジルを拠点とする世界最大手の食肉加工業者・JBSが2021年5月31日に、サイバー攻撃によりアメリカ・カナダ・オーストラリアのITシステムに障害が発生し、影響を受けた全てのシステムを停止したことを発表しました。同社は6月1日に、復旧の進展により2日にも大部分の工場が操業を再開する見通しを明らかにしましたが、影響を受けた工場はアメリカにおける食肉生産量の5分の1を供給していたことから、一時世界的な食肉不足が懸念される事態となっていました。

Media Statement: JBS USA Cybersecurity Attack
https://www.globenewswire.com/news-release/2021/05/31/2239049/0/en/Media-Statement-JBS-USA-Cybersecurity-Attack.html

U.S. says ransomware attack on meatpacker JBS likely from Russia; cattle slaughter resuming
https://www.cnbc.com/2021/06/01/big-north-american-meat-plants-halt-operations-after-jbs-cyberattack.html

JBS Moves to Reopen ‘Vast Majority’ of Plants After Cyberattack - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-06-02/jbs-moves-to-reopen-vast-majority-of-plants-after-cyberattack

US: Russian threat actors likely behind JBS ransomware attack
https://www.bleepingcomputer.com/news/security/us-russian-threat-actors-likely-behind-jbs-ransomware-attack/

JBSの子会社であるJBS USAが5月31日に、前日の30日にサイバーセキュリティ攻撃を受け、同社のITシステムが停止したことを発表しました。同社から報告を受けたアメリカ政府は6月1日に、「攻撃はロシアを拠点とする犯罪組織によるもの」との見方を示す声明を出しました。


JBSは世界最大の食肉業者で、今回の攻撃によりオーストラリアの事業が停止しました。また、全米食品商業労働組合の関係者はCNBCに対し、「攻撃の影響でアメリカの全ての牛肉工場が操業停止を余儀なくされた」と話しているとのことです。

JBSの操業停止は、アメリカの食肉業界に大きな混乱を及ぼしました。アメリカ農務省の推計によると、同国の食肉加工業者が6月1日に解体した肉牛の総数は9万4000頭で、前週の同日比で22%減、前年比では18%減だったとのこと。また、食用豚の解体数も前週比20%減、前年比7%減でした。これにより、卸売業者が大口取引しているアメリカ産牛肉のうち3等級中2番目のチョイスカット等級の価格が、肉100ポンド(約45kg)当たり3.59ドル(約390円)上昇し334.56ドル(約3万6670円)となるなど、アメリカの食料品供給網に一時大きな混乱が生じていました。

アメリカ政府のカリーヌ・ジーン・ピエール副報道官は記者団に対し、「JBS SAが、ロシアのものと見られる攻撃者から身代金を受けたことを確認しました。攻撃は、ランサムウェアによるものでした」と話しました。


アメリカでは、5月9日に同国最大の石油パイプラインがランサムウェア攻撃を受けて5日間停止し、アメリカ東部で深刻な燃料不足が懸念される事態が発生したばかりでした。

アメリカ最大の石油パイプラインがランサムウェア攻撃で停止、バイデン政権は緊急事態を宣言 - GIGAZINE


JBS USAのアンドレ・ノゲイラCEOは、6月1日の声明で「当社は、同じくJBS傘下の鶏肉加工業者・Pilgrim's Prideとともにフードサプライチェーンの要を担っているので、できるだけ早期に操業を再開する責任を負っていると認識しています」とコメント。続けて2日に「当社のシステムはオンラインに戻りつつあり、ほぼ全ての施設から製品を顧客に出荷することができました」と発表して、北米の食肉工場が部分的に正常化したことを明らかにしました。

JBSが攻撃者による身代金要求を拒否したかどうかは記事作成時点のところ不明ですが、ノゲイラCEOが「当社にはこの手の問題に対処するためのサイバーセキュリティ計画があり、それらの計画を成功裏に遂行しているところです」と語っていることから、積極的な対応がなされたと見られています。

・つづき
身代金12億円が世界最大の食肉加工業者・JBSからランサムウェア攻撃者に支払われたことが判明 - GIGAZINE

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in ,   セキュリティ, Posted by log1l_ks

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