サイエンス

幼少期のトラウマが老後のアルツハイマーにまで影響する可能性が最新の研究で示唆される


アルツハイマー病とは脳の認知機能が低下していく症状で、主に老化が原因で発病します。そのほか、飲酒が原因でリスクが倍増したり、睡眠時間が短いとリスクが高くなると報告されたりと、さまざまな要因がアルツハイマー病の発症に影響すると考えられていますが、2021年に発表された最新の研究では、「幼少期に経験したトラウマ(心的外傷)」が年齢を重ねた後の認知機能の低下に影響している可能性が示唆されました。

Adverse childhood circumstances and cognitive function in middle-aged and older Chinese adults: Lower level or faster decline?
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8025052/

Association between different dimensions of childhood traumatization and plasma micro-RNA levels in a clinical psychiatric sample - PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34058649/

A possible link between childhood trauma and Alzheimer disease? - Padirac Innovations' blog
https://padiracinnovation.org/News/2021/06/a-possible-link-between-childhood-trauma-and-alzheimer-disease

アメリカのイェール大学で医療経済学を研究するジュオアー・リン氏と同じく健康医療を研究するシー・チェン氏が2021年3月に公開した論文では、幼少期の状況と認知的老化との長期的な関係が調査されました。ここでは、家族の社会的経済状況を含むステータス、近所のつながり、友情や健康状態が、認知障害のレベルと認知機能の低下率の両方に大きく関係していることが示されています。

対照的に、子どもの頃の近所の安全や地域の治安は認知障害のレベルにのみ影響しており、子どもの頃の母親との関係は認知機能の低下率にのみ影響しているとのこと。総合すると、小児期の環境の悪さの影響は、認知機能低下の速度よりも、認知機能障害のレベルに大きく表れていると、リン氏とチェン氏の研究では示されています。


また、そのような認知機能の低下は、母親との関係が和らげてくれるということを研究者たちは主張しています。一方で父親との関係で同様の影響は見られず、父親と母親が家庭で果たすさまざまな役割によってこの差異が説明できると考えられているそうです。


またドイツの神経疾患センターが行った同様の研究では、人間の遺伝子に含まれるmiRNAという要素に注目し、アルツハイマー病と小児期のトラウマの関係を調査しました。この研究では、小児期のトラウマに関するスコアと有意義に関連していたと考えられる複数のmiRNAサンプルが、アルツハイマー病とも重要な関連を示したことが記録されています。


これまでも「子どもの頃の体験が長期的な健康の影響を持つ」という観点でかなりの数の研究が行われてきましたが、どの研究もどこか捉えどころがなく明確なものではなかったそうです。そのような中で、神経系の発達と機能に影響するmiRNAに焦点を当てた発見は、これまで以上に有意義効果を期待できると考えられています。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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