体がチョコレート色の新種のアマガエルが見つかる
by Robert Couse-Baker
「ハリー・ポッター」シリーズに出てくる、魔法界で人気のあるお菓子「カエルチョコレート」のような見た目をした、チョコレート色のアマガエルがニューギニア島のプラリ川流域で見つかりました。
Multiple trans-Torres Strait colonisations by tree frogs in the Litoria caerulea group, with the description of a new species from New Guinea
https://www.publish.csiro.au/zo/Fulltext/ZO20071
Look at This Newly Discovered, Utterly Adorable 'Chocolate' Frog Species
https://www.sciencealert.com/look-at-this-new-species-of-cute-chocolate-frog
グリフィス大学およびクイーンズランド博物館の研究者であるポール・M・オリバー氏らは、オーストラリアやニューギニアに生息しているカエルである「リトリア(Litoria)」属に関して広範な調査を行いました。研究結果はオープンアクセスの学術誌「Australian Journal of Zoology」に掲載されています。
この研究を見ていく事前準備として、カエル研究者の中ではオーストラリアで一般的な「オーストラリアグリーンツリーフロッグ」(イエアメガエル、学名:Litoria caerurea(リトリア・カエルレア))がリトリア属に含まれるのかどうかで議論が分かれていることを知っておく必要があります。
2016年、両生類学者のウィリアム・デュエルマン氏らによってリトリア属は複数に分割されました。この分割の結果、リトリア・カエルレアは「ラノイデア(Ranoidea)」属に分類され、学名も「Ranoidea caerurea(ラノイデア・カエルレア)」となりました。しかし、分割の根拠になったはずの遺伝子解析データには欠損があることから、すべての科学者が分割に賛同しているわけではなく、今回調査を行ったオリバー氏らも賛同しない立場を取っているため、「ラノイデア・カエルレア」の名前を使わず「リトリア・カエルレア」を使っています。
オリバー氏らは、このリトリア・カエルレアがどれぐらいの範囲に生息しているのか、オーストラリアとニューギニア島で調査を行いました。オーストラリアとニューギニア島の距離は、最も両者が接近しているトレス海峡で150kmほど。かつて海面が低かった時代には陸橋で行き来が可能だったため、生物種の著しい混在があり、リトリア・カエルレアも両方に生息しています。
今回の調査では、ニューギニア南部にあるサバンナ地方でもリトリア・カエルレアが見つかりました。このリトリア・カエルレアはオーストラリアのクイーンズランド州北部に生息しているものと共通の特徴がありました。
そして、ニューギニア島南側・ディセプション湾に注ぐプラリ川流域の熱帯雨林では、リトリア・カエルレアとは異なるリトリア属のカエルが見つかりました。この新種のカエルは「背中の色が茶色のみで、白色や黄色の斑点がない」「目の後ろに紫色の小さな斑紋がある」「胴体・四肢・喉の腹側は暗褐色~中褐色」などの特徴があり、他のリトリア属ははっきり見分けることができるもので、「リトリア・ミラ(Litoria mira)」の名前が与えられました。「ミラ」はラテン語で「驚き」「不思議」を意味する言葉で、調査を行ったオリバー氏は、「オーストラリアでよく見られるリトリア・カエルレアの親戚にあたる種が、サバンナではなく、低地熱帯雨林に生息している点に驚かされました」と語っています。
発見されたリトリア・ミラ。
「ハリー・ポッター」作中に登場した「カエルチョコレート」を食玩化したアイテムはこんな感じ。
オリバー氏らの調査で撮影されたカエルの一部。上段がリトリア・ミラ、中段左がリトリア・カエルレア、中段右がリトリア・カベルニコラ(Litoria cavernicola)、下段左がリトリア・ギレニ(Litoria gilleni)、下段右がリトリア・スプレンディド(Litoria splendid)。
リトリア・ミラを撮影したスティーブ・リチャーズ氏は「このカエルの探索を妨げるのは、ワニがたくさんいるような、非常に暑くて湿った場所に生息している点です」「生息しているということはわかったので、そのままにしておきましょう」と述べました。なお、リトリア・ミラはプラリ川流域のほかニューギニア島北側でも見つかっており、島の全域に広く生息している可能性が考えられています。
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