新型コロナウイルスの「武漢研究所流出説」について科学者18名が再調査を要求
世界保健機関(WHO)の武漢調査団が「武漢にある研究所からウイルスが流出した可能性は極めて考えにくい」と結論を下した一件について、シカゴ大学やカリフォルニア大学、ハーバード大学などの研究機関に所属する科学者18名が学術誌大手のサイエンス誌上で「再調査」を要求しました。
Investigate the origins of COVID-19 | Science
https://science.sciencemag.org/content/372/6543/694.1
More Scientists Urge Broad Inquiry Into Coronavirus Origins - The New York Times
https://www.nytimes.com/2021/05/13/science/virus-origins-lab-leak-scientists.html
新型コロナウイルスの武漢研究所流出説の再調査を求めたのは、フレッド・ハッチンソンがん研究センターに所属するジェシー・D・ブルーム氏らを中心とするアメリカ・カナダ・イギリス・スイスの科学者18名。この18名は新型コロナウイルスに関連する専門知識を有する科学者という立場から、今回のパンデミックの「起源」について再調査を求めています。
中国政府は「冷凍食品などを通じて海外からウイルスが運び込まれ、ヒトへの感染が広がった可能性がある」という主張を展開しているものの、起源についての世界的な主流は、コウモリなどの宿主から中間宿主を介してヒトに感染するようになったという「野生動物起源説」や、新型コロナウイルスが初めて見つかったとされる中国・武漢に存在する中国科学院武漢ウイルス研究所から流出したという「武漢研究所流出説」の2つといえます。しかし、2021年2月にWHOの武漢調査団は武漢研究所流出説を「極めて考えにくい」と否定し、間接的に野生動物起源説を支持していました。
WHO 武漢調査チーム 「研究所からウイルス流出可能性低い」 | 新型コロナウイルス | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210210/k10012858521000.html
しかし、WHOの武漢調査団は中国共産党の指示のもと、感染の封じ込めに成功したことを示す展覧会をはじめとする宣伝色の強い施設の視察に多くの時間を割かされた上に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に最初期に感染した患者のデータも提供されず、「WHOの調査には問題がある」と国際世論上から非難を浴びていました。
中国がWHOの新型コロナ調査団に対して未編集データの引き渡しを拒否 - GIGAZINE
ブルーム氏ら18名はWHOの武漢調査団が提出した313ページもの報告書について「武漢研究所流出説について取り上げたものはわずか4ページしかない」と言及。野生動物起源説と武漢研究所流出説という2つの説について、「考察のバランスが取れていない」と主張しました。
ブルーム氏ら18名は十分なデータが得られるまでそれぞれの説を真剣に受け止めるべきだと語り、WHOのテドロス・アダノム事務局長が2021年3月30日に「まだ発生源を特定していない」と述べて武漢への調査団の再派遣を検討していると語った一件を支持するとコメント。一方、アメリカやイギリスなどで新型コロナウイルスが中国から広まったとしてアジア人に対する差別感情が高まっている問題に対し、「ウイルスの拡散に関する重要な知見を世界と共有したのは、中国の医師や科学者、ジャーナリスト、市民であり、こうした人々の中には多大な個人的犠牲を支払った人もいます」と付言しています。
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