Uberは50社もの関連企業からなるネットワークを利用して世界各国で税金逃れを行っている
配車サービスやフードデリバリーサービスを提供するUberは、世界中のさまざまな国でビジネスを展開する多国籍企業です。ところが、オーストラリアに本拠を置く調査機関であるCenter for International Corporate Tax Accountability and Research(CICTAR)の調査により、Uberがオランダに設立した子会社を中心とする巨大な関連企業ネットワークを構築し、数千億円もの利益をなかったことにして税金逃れを行っていることが判明しました。
Een goedkoop ritje ? De Groene Amsterdammer
https://www.groene.nl/artikel/een-goedkoop-ritje
Champions League of tax avoidance:’ Uber used 50 Dutch shell companies to dodge taxes on nearly $6 billion in revenue, report says | CICTAR
https://cictar.org/champions-league-of-tax-avoidance-uber-used-50-dutch-shell-companies-to-dodge-taxes-on-nearly-6-billion-in-revenue-report-says/
Ministers urged to act on Uber's 50-company Dutch tax shelter - DutchNews.nl
https://www.dutchnews.nl/news/2021/05/ministers-urged-to-act-on-ubers-50-company-dutch-tax-shelter/
CICTARによると、2019年にUberはアメリカと中国を除いた世界各地で58億ドル(約6400億円)もの営業利益を上げたそうですが、この利益はUberがオランダに設立した子会社に送られているとのこと。オランダにはUberが設立した50社もの非公開株式会社からなるネットワークが存在し、この子会社ネットワークを利用することで、58億ドルもあった営業利益が最終的に46億ドル(約5000億円)の営業損失まで圧縮されたとCICTARは指摘しています。
オランダの子会社を中心としたUberのネットワークは、2019年にバミューダ諸島の子会社からロゴやアプリなどの知的財産権をオランダの子会社に売却したことで作られました。知的財産権の売却はシンガポールの子会社からの160億ドル(約1兆7500億円)もの融資によって賄われており、オランダの子会社は利息の支払いなども含めることで、年間10億ドル(約1100億円)の課税所得を今後20年間にわたって圧縮することができるとのこと。
Uberは、世界各地で上げた収益をオランダに作り上げた子会社のネットワークに送ることで課税所得を圧縮しているほか、各国に設立した子会社も知的財産などで多額の支払いを行うことで政府へ支払う税金を減らしています。CICTARの計算では、オーストラリア政府はUberの税金逃れネットワークによって3050万ドル(約35億円)もの税収入を失い、世界全体では4億2900万ドル(470億円)もの税金が支払われていないそうです。
また、CICTARはオランダに存在する複数のUber子会社が、本来は提出するべき財務報告を提出していないことを発見しました。他にも、インドでは多国籍企業に課される税金のうち3分の1未満しか支払われていないこともわかったとのこと。
CICTARの上級アナリストであるジェイソン・ワード氏は、「Uberは彼らの租税回避アプローチを強化しました。将来の税負担を防ぐために、オランダでより有用で実行可能な税システムを作っています」「これは租税回避のチャンピオンリーグです」と述べて、Uberが税金逃れのために設立したシステムを非難しています。
数千億円もの利益に対する課税を回避するUberの取り組みは、国境を越えた企業間取引を行う多国籍企業による税金逃れについて、政府の対応が後手に回っている問題を浮き彫りにします。この問題を解決する方法として、ワード氏は多国籍企業が「実際に利益を上げた国」に基づいて税金を支払うようにするため、世界的な税制改革が必要だと訴えました。
また、Uberが税金逃れのネットワークを構築したオランダ政府も、Uberに対する行動を始めるべきだとワード氏は指摘。「この大規模なグローバル税金シェルターを作成するため、Uberがバミューダ諸島からオランダへ知的財産権を人為的に売却したことを考えると、オランダ政府は世界に影響を与える一連の取引の正当性を徹底的に調査する必要があります」とワード氏は主張しています。さらに、オランダを通じた銀行取引の規模を考えると、Uberを金融機関として規制するべきかどうかも検討する必要があるとのこと。
近年では大企業による税金逃れが世界的な問題となっており、アメリカのジョー・バイデン大統領は2021年4月に企業課税を強化する税制改革案を発表。多国籍企業による税金逃れを防ぐために世界共通の最低税率を導入したり、租税回避への罰則を強化したりする計画を打ち出しています。
米・バイデン政権 企業課税強化の税制改革案を発表 | 米 バイデン大統領 | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210408/k10012962181000.html
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