メモ

なぜAppleやGoogleなど名だたる企業は「デラウェア州」を選ぶのか?


アメリカ・デラウェア州はアメリカで2番目に小さく、人口も6番目に少ない州です。そんなデラウェア州が、Googleの親会社であるAlphabet、Apple、Amazonなどの大企業を含む28万5000社以上もの国際企業の登録地となっている背景には、法律の抜け穴があるとのこと。「デラウェア州の抜け穴」と呼ばれる同州の税制度上の問題について、ビジネス誌・The Hustleが解説しました。

Why do so many companies incorporate in Delaware?
https://thehustle.co/why-delaware-is-the-sexiest-place-in-america-to-incorporate-a-company/

デラウェア州ウィルミントンの「1209 North Orange Street」という住所に位置するコーポレーション・トラスト・センターは、オランダの多国籍企業・Wolters Kluwerの子会社であるCT Corporationが運営する「登録代理人サービス」の拠点で、2012年には少なくとも28万5000もの企業がこの住所を登録地にしています。

デラウェア州を登録地にしている企業の中でも、特に規模が大きい国際企業をまとめた一覧が以下。The Hustleによると、アメリカの上位企業500社のリストであるFortune 500に選定された企業のうち、68%がデラウェア州に籍を置いているとのこと。


デラウェア州が多くの企業の登録地になったのは、19世紀初頭にアメリカのニュージャージー州で起きた税制度改革が端緒です。当時、すべての企業は事業を行う州で法人として登録され、それぞれの州の税制に従う必要がありました。折からの産業革命で、巨大企業が市場への支配力を強めつつあったのを問題視したアメリカの各州は、企業に重税を課して市場の独占を規制しようとしましたが、ニュージャージー州は別でした。

多くの州が法人税を増やしているのを、産業界を州内に呼び込む好機だと捉えたニュージャージー州は、逆に非常に緩やかな法人税法を1891年に制定し、企業の誘致を図りました。これに応じて、大企業が続々とニュージャージー州に集まった結果、同州は州の借金を瞬く間に完済するほどの税収を得ました。


デラウェア州もこの動きに追随し、1899年に新しい法人関連法を制定。法人税だけでなく、官僚的な取り締まりや株主訴訟など、ありとあらゆる悩み事から企業が開放されるような、全面的な優遇策を導入しました。

その後、ニュージャージー州を始めとする多くの州が放漫な規制制度を反省し、優遇措置を改廃しましたが、デラウェア州だけは企業の優遇を続けました。これが法律の抜け穴として現代にも残っているというのが、デラウェア州が企業に選ばれ続けている理由です。

例えば、カリフォルニア州の企業はアメリカ政府が定める21%の連邦法人税に加えて、純利益の8.84%分の州所得税や、6.65%分の代替ミニマム税という税金を納めなければなりません。しかし、デラウェア州では商標や著作権、リースなどの無形資産により得られた利益は課税されません。

この制度を利用して、企業が節税する方法を簡略化したのが以下。企業はまずデラウェア州に子会社を設立します。


続いて、子会社に商標や著作権といった、デラウェア州では課税の対象にならない無形資産を譲渡します。


その上で、子会社に対して「無形資産の使用料」を支払います。


無形資産により得た利益は課税対象にならないので、子会社が本社から支払いを受けた無形資産の使用料も非課税です。


しかも、使用料という支出が生じたことで本社の見かけ上の利益も圧縮され、法人所得税を節税することができます。この二重の節約が、「デラウェア州の抜け穴」と呼ばれる仕組みの正体です。


また、デラウェア州では役員や取締役の名前を開示することが義務づけられていないため、子会社の人事は匿名です。さらに、子会社の登録も非常に簡略なので、デラウェア州では1時間もかからずに会社を設立することが可能とのこと。

デラウェア州を企業にとって一段と魅力的なものにしているのが、同州にある衡平法裁判所です。この裁判所では、企業訴訟は市民の中から選任される陪審員ではなく、会社法を専門とする裁判官により審議されます。このため、衡平法裁判所では企業側に非常に有利な判決が下ることが多く、株主訴訟では特にこの傾向が顕著だと指摘されています。

企業などによる租税回避問題の調査を行っているTax Justice Networkによると、アメリカはケイマン諸島に次ぐ世界第2位の租税回避地(タックス・ヘイヴン)になっているとのこと。こうした状況を打開すべく、アメリカ議会は2020年に匿名でペーパーカンパニーを設立することを禁じる法律を可決させましたが、これが「デラウェア州の抜け穴」の是正につながるかは未知数だと、The Hustleは述べました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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