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毎年の所得ではなく保有する資産に課税する「富裕税」はどれほどの税収を政府にもたらすのか?


近年では裕福な人々と貧しい人々の格差が広がっていると指摘されており、世界の富裕層上位2100人が46億人の最貧困層より多くの資産を持っているとも報じられています。そんな中、総資産から負債を差し引いた残りの資産に課税する「富裕税」の導入を求める動きが強まっており、「富裕税がどれほどの税収を政府にもたらすのか?」を示す表が公開されています。

Modeling a Wealth Tax
http://paulgraham.com/wtax.html

富裕税とは、総資産から総負債を差し引いた純資産に対して課税する税金のことで、毎年の所得に課税される所得税とは別に徴収されます。資産に対して課税することによって富の偏りを調整することができると考えられていますが、かつて富裕税を導入していた多くの国ではすでに廃止されており、記事作成時点で富裕税が存在するのはスイス・ノルウェーなど一部の国のみです。日本でも1950年~1953年に富裕税が導入されていましたが、税収総額の少なさや税務執行上の問題が浮上したことから廃止されています。


突出した富裕層が特に多く、「富裕層が適正な税を負担していない」という不満が高まるアメリカでも、富裕税の議論は活発化しています。2020年アメリカ大統領選挙に出馬したエリザベス・ウォーレン上院議員は、5000万ドル(約53億円)以上の資産を持つ富裕層を対象にした「富裕税」を提唱して注目を集めました。

また、カリフォルニア州ではロブ・ボンタ州議会議員が中心となり、「3000万ドル(約32億円)以上の資産を持つ上位0.15%の富裕層を対象に、0.4%の富裕税を課す」という法案を議論しています。富裕税の対象となるのはカリフォルニア州に住む3万400人ほどであり、導入されれば年間75億ドル(約8000億円)の税収をカリフォルニア州にもたらすとのこと。


富裕税は対象者が所有する純資産に対して毎年課税されるため、税率が「1%」だった場合、初年度の富裕税徴収後は財産の99%が手元に残ります。財産の変動がなかった場合、翌年には手元に残った99%から再び1%が富裕税として徴収され、初年度の財産比で約98%が手元に残る計算です。

たとえば、20代で富裕税を課されるほどの財産を手にした「A氏」という人物が存在すると仮定すると、A氏が富裕税の徴収対象になる資産を保有している限り、死ぬまで資産に対する富裕税が課され続けます。財産の変動を無視した場合、A氏から富裕税が60年間にわたって徴収され続けると、60年後のA氏が所有する資産は初年度の54.7%になる計算です。富裕税は1年に徴収する税率が低くても、継続して課されることで大きな税収が政府にもたらされる仕組みとなっています。

実際に富裕税を60年にわたって徴収し続けた場合、どれほどの税収が政府にもたらされるのかを税率ごとに示した表がこれ。富裕税が5%に設定された場合、60年後には対象者が所有する課税資産の95%が政府のものとなります。

富裕税の税率政府の取り分
0.1%6%
0.5%26%
1.0%45%
2.0%70%
3.0%84%
4.0%91%
5.0%95%


上記の表は対象者の資産変動や、60年が経過する前に対象者の資産が富裕税の課税対象を下回る可能性が考慮されていません。それでも、一見すると低い税率が劇的な税収を政府にもたらすことがわかります。

なお、富裕税は富の偏りを是正する上で有効な解決策かもしれませんが、富裕税を導入したことにより富裕層が転居してしまい、結果として税収が減ってしまう危険性も懸念されています。しかし、スタンフォード大学が4500万件の納税記録を分析した研究では、「毎年の所得が100万ドル(約1億500万円)以上の億万長者は、租税回避のために居住地を変える可能性が低い」ことも判明しています。

4500万件の納税記録の分析により億万長者は税金を高くしても引っ越ししないことが判明 - GIGAZINE

by 401(K) 2012

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in メモ, Posted by log1h_ik

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