Facebookでポリシー違反のはずの「クレジットカードにおける年齢差別広告」が表示されていたことが判明
アメリカのFacebookのポリシーでは、金融・住宅ローン・雇用に関する広告を、年齢や性別といったユーザーの属性によって表示/非表示とすることを禁じています。これは差別の助長を防ぐための措置ですが、新たに、クレジットカードの広告が、特定の年齢層にのみ表示されていたことがわかりました。
Credit Card Ads Were Targeted by Age, Violating Facebook’s Anti-Discrimination Policy ? The Markup
https://themarkup.org/citizen-browser/2021/04/29/credit-card-ads-were-targeted-by-age-violating-facebooks-anti-discrimination-policy
Facebookはオーディエンスの属性や興味、関心をベースにターゲティング広告を配信することができます。これにより、広告主は広告を表示する相手を絞り込み、予算を削減しつつ、効果の高い広告を出すことが可能です。
しかし、Facebookは2019年に、保険・投資・融資などの金融サービスに関連する広告で、高年齢層や女性を対象者から外したとして、利用者から提訴されました。「住宅広告」「求人広告」「融資広告」などに関して、オーディエンスの属性を指定することは差別を助長するものであると訴えられたわけです。Facebookは2019年3月に原告側との和解に応じて、アメリカでは上記3分野に関して年齢などのターゲティング広告をやめることを決定しました。
なぜターゲットを指定した広告が差別を拡大させるのかは、以下の記事からその詳細を読むことが可能です。
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by Pabak Sarkar | Flickr
しかし、2021年4月、The Markupは複数のクレジットカード企業の広告がFacebookのポリシーに違反して、年齢によるターゲティングを行っていたことを報じました。
The Markupがポリシー違反を確認したのは「Aspiration」「Hometap」「Chime」「Varo」の4社。このうち、ChimeとAspirationのポリシー違反は、2019年11月に公民権団体が起こした訴訟で特定されていましたが、HometapとVaroは初の報告です。
The Markupが確認した広告は全部で91個で、これらは異なる6つの住宅担保貸付あるいはクレジットカードについてのものでした。それぞれの広告にはFacebookの識別子が振られており、同じ広告でも地域や時間、その他ターゲティングで複数のバージョンが存在したとのこと。
これらの情報はThe Markupの「The Citizen Browser Project」でデータが収集されました。The Citizen Browser Projectでは2021年3月16日から4月26日までの間、1800人以上のパネリストが参加して、自分のFacebookフィードに表示された広告の内容を、広告機能の一部である「この広告が表示されている理由」の情報と共にプロジェクトに提供しました。
この結果、以下のように、4社の広告は年齢によるターゲティングを行っていることが判明。特定の種類の画像あるいはキャッチコピーの広告を、Aspirationは25~65歳、Chimeは18~40歳、Hometapは34~64歳、Varoは22~45歳の年齢層にのみ表示していました。
Facebookは本件に関する質問に回答しておらず、これらの広告がどうやってFacebookのポリシーを回避してターゲティング広告として配信されたのかは不明とのこと。ChimeやAspirationもコメント要請に応えていませんが、HometapはThe Markupから連絡が入るまで、年齢によるターゲティングが行われていることに気づいていなかったと回答しています。
Hometapは「連絡が入ってからサードパーティーのエージェンシーと協力して広告キャンペーンを監査したところ、多くのFacebook広告が、実際に年齢によるターゲティングを行っていることがわかりました。このため、全てのFacebook広告をアップデートし、オーディエンスに対し年齢に基くターゲティングしないようにしているところです」とHometapのRachel Keohan氏は述べました。
またVaroのAlex Woie氏は「Varoの新規獲得チームはFacebookと連絡を取り、我々の広告の性質とターゲットとするオーディエンスが完璧に要件を満たしていたことを確認しています」とWoie氏は述べています。
本件に関して、デジタル正義イニシアチブの代表弁護士であるDavid Brody氏は、「これらは人の人生において経済的変化をもたらす機会の否定です。家を買うために住宅ローンを利用する能力、貧困から脱出するために仕事を得る力、小規模ビジネスを始めるためにローンを組む能力など……。Facebookのアルゴリズムがこれらの機会を遠ざけたがために、本来は得られる機会が得られなかった可能性があります」と指摘しました。
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